【北欧通信 Vol.16】アイスランド環境運動発祥の地、グトルフォスの滝の大瀑布


美しいアイスランドの自然が今のように守られる発端となった滝が観光名所ゴールデンサークルの中に存在しています。

ゲイシール間欠泉から車で10分、およそ10kmの距離にあるのがグトルフォスの滝。ゴールデンサークルの最奥にある観光地で、アイスランドでも最大規模の滝です。


このグトルフォスはアイスランドで「黄金の滝」を意味しており、晴天の際には滝が光り輝くことから付けられたとされています。豊富な水量が怒濤の如く流れ落ちる滝からは水飛沫が舞い上がり、美しい虹を見ることもできるとのこと。


駐車場に到着。こちらも広く、観光客がどっさり。

レストランとトイレとお土産屋などが入った広めの施設があります。

有名観光地だけあってかなり大きく、賑わっていました。


滝の方に向かいましょう。辺りははるか彼方まで続く草原です。

滝に続く道があり、遠くに水飛沫が待っているのがここからでも見えます。滝の音はずっと聞えています。

整備された木道が続きます。水飛沫を被ることになるので、雨具があれば羽織っておきましょう。近づくと風向きによってかなり濡れます。

滝の展望台はこんな感じ。左端にさっきの駐車場と施設があり、図にあるように滝の間近と渓谷の上の2ヶ所から滝の雄姿を楽しむことができます。

滝が見えてきました。グトルフォスの滝は11mの上部と20mの下部の二段滝で、長さ2.5km、深さ70mのグルフォス渓谷の中に位置しています。

下部の駐車場と木道が見えます。風景はまさに渓谷。

上の展望台へ。あんなに間近からみれるのか…と下の展望台を見てちょっとびっくり。


この下部の滝のなだれ落ちる風景はかなりのど迫力です。

この規模と水量の圧倒的なこと。氷河を源流とし、止めどなく流れ続けます。

さて、このグルフォスの滝には17世紀の伝説があります。滝の上流の川は流れが激しい上に下にこの滝があるため、馬の背に載っても渡るのは極めて困難でした。

片方の岸に住んでいた農家の息子は夏の間、この川の上流で羊の世話をしていました。反対側の岸辺では娘が羊を世話していたのですが、ふたりは川越しに見つめ合っていました。

娘は青年にどうにかして川の浅瀬を伝ってなんとか渡りきり、娘の元に辿り着きました。その後の話はほとんど知られていませんが、彼らは結婚して多くの子宝に恵まれたとのことです。

展望台から戻っている時に雲が切れ、水飛沫に映えるように虹が出ました。思わず足を止めて息を呑みます。


階段を降り、下の展望台へ。

こちらがメインだからか結構な人です。

この辺りまで水飛沫が飛んできます。

人と滝のスケールの違いにご注目。

やはり下部の滝を間近で見るとさらにすごい迫力です。

下の展望台の一番奥から。全貌が見えないため、もしかしたら上から一望する方が迫力を直に感じられるかもしれません。


さて、グルフォスの滝に関するもうひとつの逸話がアイスランドの環境運動に関するもの。20世紀の初頭にイギリス人がこの滝を所有していたトマス・トマソンに水力発電所建設のために土地の売却を求めました。

トマスは1度は販売を拒否しましたが、その後海外の開発者にリースされることになったのです。

トマスの娘であるシグリットはこの美しいグルフォスの滝がなくなることに反対し、滝に身を投げると脅したり、契約の無効化を裁判所に訴えたり、年中長い道のりを歩いて首都のレイキャビクまで向かい政府と交渉をするなどなど、あらゆる手を尽くして抵抗しました。

そうしているうちに、開発者らの資金不足などもあり水力発電所建設計画は頓挫。結果的にアイスランド最大の観光名所のひとつが現代まで残されることになったのです。この功績からシグリットはアイスランド初の環境運動家とも呼ばれています。

なお、この時シグリズルに協力した弁護士がスヴェイン・ビョルンソンという人物で、後にアイスランド初代大統領に就任したとのこと。

貧しく教育も受けていなかった女性の訴えにより資本主義的な大事業が撤回されたことは、アイスランドのその後の文化にも多大な影響を与えています。

1980年にヴィグディス・フィンボガドゥティルが世界初の民選の女性国家元首として第4代大統領に就任したことを考えると、形にはならずとも彼女が残したものの片鱗を少しは感じ取ることができるかもしれません。

さて、次はゴールデンサークル内の「秘境」とも呼べる青い滝、ブルーアルフォスの滝を巡る冒険へと出発です。

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