「液体のり」でがん細胞がほぼ消滅、応用の幅広さに期待も


液体のりが病気の治療を大きく変えていく最初の一歩になるかもしれません。詳細は以下から。

東京工業大学のチームががんの放射線治療で薬剤に「液体のり」の主成分を混ぜることで薬剤がスライム状になってがん細胞にとどまりやすくなり、大幅に治療効果が高まることを発表しました。

がんの放射線治療は薬剤をがん細胞に取り込ませた上で中性子をあてることでがん細胞を破壊するという治療法。手術療法、化学療法と合わせてがんの標準治療のひとつと位置付けられています。

今回効果の確認された放射線治療は、国内10ヶ所弱の施設で臨床試験が進められているホウ素中性子捕捉療法(BNCT)と呼ばれる次世代の放射線治療法。ホウ素化合物の薬剤を注射してがん細胞に取り込ませて外から中性子を照射して破壊するため、正常な細胞へのダメージが少ないことが特徴です。

この療法の課題はホウ素化合物ががん細胞から流出しやすいことでしたが、ホウ素化合物に液体のりの成分ポリビニルアルコール(PVA)を混ぜることでスライムをつくるのと同じ原理で分子が長くなることを応用、がん細胞が薬剤を取り込みやすい形状にしました。

結果的にがん細胞の中に入るホウ素化合物の量は約3倍に増えた上にとどまる時間も長くなりました。大腸がんのマウスを用いた実験ではがん細胞がほとんど増えなくなり、「根治に近いレベルを実現」できたとのこと。

きわめて画期的なニュースですが、最も画期的なのはこれががんの放射線治療以外にも応用できる可能性が高いこと。スライム状にして薬剤を取り込みやすく、かつとどまりやすくするのであれば、ほかの病気の治療にも有効活用できる可能性があります。

まだ先の話になるとはいえ、液体のりが今後の病気治療を大きく変えることになるかもしれません。

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