【コラム】新型コロナ対策で「禁煙・タバコ生産停止を要請」に困惑の声、依存症治療やアングラ化問題への指摘も


確かにタバコは吸わない方が健康にいいことは言うまでもありません。ですが、きわめて依存性が高い薬物である以上、なくして終わりで済む問題でもありません。国際的な呼びかけに反響が広がっています。詳細は以下から。

◆新型コロナ対策で国際的組織が「禁煙・タバコ生産停止を要請」
現地時間の4月6日、呼吸器系や肺の専門家、医療関係者などによる国際的組織、国際結核肺疾患連合が新型コロナウイルスのリスク低減のために喫煙者に禁煙を求めるとともに、たばこ会社に製品の製造と販売の停止を呼び掛けたことをロイターが報じ、波紋が広がっています。

同連合の公衆衛生専門家Gan Quan医師は声明で「新型コロナウイルスに対抗する最善策は、たばこ業界が直ちにタバコの生産とマーケティング、販売を停止することだ」とし、同時に世界各国の政府が禁煙を勧告する「道徳的要請」を行うべきだと訴えました。

これは、喫煙者が新型コロナに感染するとより深刻な疾病や合併症にかかりやすいとする中国などの予備的研究や、米医学誌の患者1000人で重症や重篤、死亡した人の25%以上が、現在と以前の喫煙者だったことなどを根拠としたもの。

またWHO(世界保健機関)や欧州疾病予防管理センターも、喫煙が新型コロナによる重篤な合併症のリスクにさらすと警告しています。

そもそも喫煙が免疫系を弱め、感染への効果的な対応をしにくくすることは知られており、肺がんや呼吸器系疾患へのリスクを高めることも周知の事実。同連合の「今こそ禁煙に適した時はない」との指摘も特段間違いではありません。

◆依存性の強い薬物としての「タバコ」を急に遮断する危険性
ですがタバコには強い依存性があることは以前BUZZAP!でもお伝えしたとおりで、ヘロインやコカイン、アルコールなどと並んで依存性の強さベスト5に堂々のランクインとなっています。

たとえばアメリカ合衆国でタバコを喫煙した人の2/3が人生の中で依存症に陥っており、2002年のWHOの報告では10億人以上がタバコを吸い、2030年には年間800万人がタバコの健康被害で死に至るとされています。

こうした依存症患者らの治療を満足に行える人的リソースがない新型コロナのパンデミックという状況下で、突然タバコの生産や販売を中止すれば、どの国でも社会的影響は免れません。

この話題はネット上でも大きな反響を得ており、喫煙者と思われるアカウントからはDVや虐待、自殺が増加するとの指摘も。タバコがないとDVや虐待を抑えられない時点で深刻なニコチン依存症と呼べますが、満足な治療を行えない状態での供給停止はさらなる混乱を招きかねません。

また多くの国ではタバコ税を徴収しているため、いざ生産や販売が停止されれば突然税収に大きな穴が開くことになり、パンデミックの状況下ではこれも大きな痛手になり得ます。

加えて「禁酒法」との類似も指摘されており、タバコがアンダーグラウンドな商品となって反社会勢力の資金源となる可能性や、粗悪なタバコによって健康を損なう可能性も十分にあり得ます。

世界的にタバコへの風当りは年々強くなる一方で、日本でも東京オリンピックへの対応を理由に4月1日から改正健康増進法が施行されて室内での喫煙が原則禁止となったばかり。

たしかに喫煙習慣を抑制し、禁煙を促すこと自体は喫煙者自身のためにも副流煙の被害を受ける周囲の非喫煙者にも健康上大きなメリットとなります。

ですが、このパンデミック時にたばこ業界に圧力を掛けるのは副次的なリスクが大きく、せいぜい健康のために禁煙を推奨するくらいにとどめておいた方がよさそうです。

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