日本が国際捕鯨委員会(IWC)を「我が代表堂々退場す」と脱退し、31年ぶりとなる商業捕鯨を再開してから7月1日で1年となりました。日本の捕鯨文化に自信満々だった自民党の二階幹事長らの思惑ははたしてどうなったのでしょうか。詳細は以下から。
現在日本が商業捕鯨を行っている海域は日本の領海とEEZ(排他的経済水域)となっており、ミンククジラなど十分な資源量が確認された種類のみを捕獲。また調査捕鯨を続けてきた南極海からは撤退しています。
調査捕鯨時には、副産物という名目のもとに年間2000~2400トンを捕獲していましたが、現在は南極海からの撤退が影響し、「捕獲枠の上限まで獲っても年間1500トン程度」に留まるとのこと。現在の捕獲量は以前に商業捕鯨を行っていたころと比べても大きく減少しています。
理由としては、鯨食文化がもはや日本では廃れてしまっていること。中高年の間では代替肉として家庭や給食で一時期食されていましたが、若者の間では鯨を食べるという発想自体がまずありません。
また鯨食経験者である中高年からしても、給食の「鯨の竜田揚げ」が不味かったというエピソードが鉄板であることからも分かるように、一部の愛好家を除いては好んで食べようという人もあまりいません。
こうしたこともあり鯨肉の値段も低迷しています。沿岸で獲る「小型捕鯨業」では、ミンククジラの刺し身用の赤肉の生肉は、操業開始の4月は1kg当たり3000~3500円程度で取引されていたものの、5月以降は2000円程度に下落。これは新型コロナに伴う外食自粛の影響ともされています。
また、鯨を船上で解体処理する「母船式捕鯨業」でも、冷凍した赤肉の取引価格は1kg当たり1000~1500円程度。冷凍のため生肉ほどの悪影響は生じていないとしますが、荷動きは良くないとのことです。
江藤拓農林水産相は6月30日の記者会見で、商業捕鯨開始から1年を迎えることについて「海外からはおおむね冷静な反応を得ている。わが国の対応が非常に評価されているということではないか」と述べました。
ですが、海外からは「どうせビジネスとして成り立たないから、調査捕鯨に切り替えてくれた方が早く潰れる」という指摘もあり、特段騒ぐような話ではないどころか勝手に墓穴を掘ってくれたと考えられている可能性もあります。
スーパーに鯨肉が多少は並ぶようになったものの、他の新鮮なシーフードと比べて値段が特に安いわけでも味が勝るわけでもないため、売れ残っているのを見たことのある人も多いはず。
政府は今年度当初予算で、捕鯨対策として去年と同額の約51億円を計上していますが、捕鯨業者側からは今後も継続的な補助金を求める声もあり、ビジネスとして今後成立するのかは微妙なところ。
当然調査ではなく商業捕鯨なので、ぜひとも他の産業と同じように独り立ちした上で捕鯨を続けてもらわなければ話になりません。その道半ばで潰れるのであれば日本の捕鯨文化は廃れたのだということにすぎません。
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