ようやく普及に弾みがつき始めてきた感のある5G(第5世代携帯電話)。
5Gを巡ってはアメリカと中国が主導権を争っており、アメリカによるファーウェイやZTEの制裁もその影響が色濃く表れていますが、どうやら中国に軍配が上がるようです。詳細は以下から。
◆遅々として進まないmmWave(ミリ波)の5Gネットワーク整備
台湾メディア「DIGITIMES」の報道によると、中国のメーカー各社はミリ波に対応した5Gスマホのリリースに消極的で、携帯電話会社もミリ波を使ったネットワークの整備をほとんど進めていないそうです。
ここで5Gで用いられる周波数帯をおさらい。Huaweiなど中国勢は「Sub-6(6GHz以下の周波数帯)」を用い、アメリカは「mmWave(ミリ波、24GHz~100GHz帯)」を使った高速通信サービスを推進。AppleはiPhone 12でSub-6およびミリ波の両方をカバーしています(日本向けは非対応)。
また、ミリ波を使った5Gネットワーク整備に消極的なのは中国だけでなく、アメリカやヨーロッパの通信事業者も大胆な投資を行うことを依然として躊躇している状況。
そのためミリ波対応のスマホやネットワークが整備され始めるのは早くても2022年以降になるとみられており、MediaTekやUNISOCなどのチップメーカーはもちろん、独自チップの開発を進めるOPPOやXiaomiなども2022年に製品をリリースする計画とされています。
◆コストが段違い、ミリ波のネットワーク整備が進まないのは当たり前でした
世界シェア上位を占める中国のスマホメーカー勢が全く乗り気でないように見えるミリ波への対応。携帯電話会社を含め、業界全体の腰が重いように見えるのは、アメリカ国防総省が2019年4月にまとめたレポートを見れば一目瞭然。
赤は1Gbps以上、青は100Mbps程度で通信できる箇所ですが、ミリ波で整備したエリア(左)とSub-6で整備したエリア(右)に圧倒的な違いがあることが分かります。
これは一般的に電波は周波数が高ければ高いほどデータ通信に利用できる帯域が広く、より高速で大容量の通信を利用できる一方で建物の中に弱く、移動中に通信が途切れやすくなるため。
もしミリ波でアメリカの人口の72%に100Mbpsの通信サービスを提供する場合、約1300万台の電柱取り付け型基地局と4000億ドルを投じる必要があるとされています。
一方、Sub-6は比較的カバーエリアが広く、既存の3G、4G基地局とアンテナなどの設備をある程度共用できるため、整備コストは段違いです。
◆アメリカがミリ波を推進せざるを得ない理由
経済合理性の観点からも現実解とみられるSub-6。しかしアメリカにはmmWaveを推進せざるを得ない、現実的な問題があります。
それが世界各国の電波の割り当て状況。Sub-6の主要な周波数帯に3.4~3.6GHz帯があり、日本でも携帯各社への割り当てが行われましたが、アメリカはそれらの大部分を政府機関に割り当て済みのため、Sub-6では満足なパフォーマンスを得られないわけです。
かつて国防総省が「アメリカがガラパゴス化しかねない」と危機感をあらわにしたミリ波とSub-6の問題。案の定、Sub-6に軍配が上がる結果となるようです。
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