紫外線による目の雪焼けを防ぐ極めて合理的なガジェットですが、私たちがよく知るアレに実にそっくりです。詳細は以下から。
◆どこかで見たことのある、数千年の歴史を持つスノーゴーグル
イヌイットやエスキモーら、北極圏に生きる人々が目の雪焼け(雪眼炎)を防ぐために4000年以上前から使っているとされるのがこの遮光器(スノーゴーグル)。
地域によってilgaakやiggaakなどと呼ばれ、北極圏で広く用いられてきた遮光器はトウヒなどの流木や骨、セイウチの牙、カリブーの角、時には海藻などが原材料となります。
いずれも顔にぴったりフィットするように削られ、真ん中に細く水平なスリットが開けられます。場合によっては内側にススが塗りつけられることもありました。
顔にきつく押しつけて装着するため、光はスリットからだけ入ることになり、太陽光と雪の反射の強い紫外線による雪眼炎から目を保護することができます。
また、小さな穴のあいた視力回復用の「ピンホールメガネ」を使ったことのある人には分かると思われますが、このスリットから見ることでよりものが見やすくなるという利点もあります。
狩猟採集生活を主としてきたイヌイットやエスキモーにとっては、目を痛めずに遠くまで見通せるこの遮光器は極めて合理的かつ重要なガジェットということになります。
◆「遮光器土偶」との関係は?
さて、遮光器と言えば日本人なら縄文晩期の東北地方に見られる遮光器土偶が真っ先に思い浮かびますが、実は遮光器土偶の名前はこの遮光器に似ているとして付けられたもの。
名付けた日本初の人類学者、坪井正五郎は1891年に大英博物館でこの遮光器を見て、この土偶の目の正体を遮光器と考えました。
確かにうりふたつと呼べるほどに似ていますが、日本ではこの遮光器が発掘されることはなく、その後の研究でこの説は概ね否定されています。
遮光器土偶は胸や腰、太ももの形状から女性をデフォルメ的に表現したものと考えられていますが、現在は目についてもデフォルメ表現とされています。
巨大な目や非現実的なプロポーションを持つ美少女の萌え絵が日本中に氾濫していることを考えると、縄文時代の私たちの先祖の表現としてはある意味納得できるものと言えるかもしれません。
もちろん、今後日本で遮光器が発掘されたり、縄文晩期にシベリアとの深い交流が明らかになれば歴史は大きく塗り替えられる可能性もあります。最終的にどちらに転ぶことになるのでしょうか…。
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