Photo by mikethedigiartist
人間の目そのものにナイトスコープのような暗視機能を一時的に付与する「目薬」が開発され、人体への実験に成功しました。詳細は以下から。
アメリカ合衆国カリフォルニア州で活動する研究チームScience for the Masses (SfM) が人間の眼球に注入することで、一晩に渡って暗闇の中の50m先の人間を視認できる暗視機能をもたらすことに成功したと発表しました。
SfMの研究者たちは深海魚から発見されたクロリンe6(Ce6)と呼ばれる光感受性物質を利用。この物質は夜盲症の治療やがん治療などにも使われる場合もあります。これまでSfMはこの物質を光増感剤として動物実験を行っていましたが、次のステップに進むために研究メンバーのGabriel Licinaさんが人体実験に同意し、今回の実験が行われました。
最初、Licinaさんはよく目を洗い、まぶたを検鏡で固定。クロリンe6と生理食塩水、インシュリン、ジメチルスルホキシドを混ぜた50マイクロリットルの液体をピペットで滴下しました。特に結膜嚢からは網膜の光感知細胞へと物質が運ばれやすいため重点的に狙って滴下されました。また、ジメチルスルホキシドには細胞の浸透性を高め、より吸収しやすくする効果があります。
Licinaさんはこの瞬間のことを
「私からは、素早く緑がかった黒い霞が視界にかかったように見えた。そしてそれが目の中に溶け込んできたんだ」
と表現しています。その後2時間程度経って暗視効果が現れてきたタイミングでチームは闇夜で実験を開始。Licinaさんは10m先の手のひら大のものを識別し、それよりも遠い距離で異なった背景の中で動く物体を捉え、文字や数字のシンボルをも認識することができました。
次いで行われた実験では50m先の木立の中に立つ人々をレーザーポインターで全員正確に場所を当てることに成功。その中には木に寄り掛かるようにして立っていた人も含まれています。この実験はLicinaさん以外の人が行った場合は正解率は1/3程度とのこと。
なお、Licinaさんの目は翌朝には通常の状態に戻り、副作用も発見されなかったとされています。研究報告の全文(英語)は以下から読むことができます。
A Review on Night Enhancement Eyedrops Using Chlorin e6 Science for the Masses
目薬という非常に簡単な方法で一晩に渡る暗視機能を得ることができるのは驚くほど画期的。災害救助の際などには大きな助けになりそうですが、逆に犯罪や軍事にも簡単に利用されうると考えると恐ろしい技術とも言えそうです。
A Team of Biohackers Has Figured Out How to Inject Your Eyeballs With Night Vision - Mic
Man Has Night Vision Injected Into His Eyeballs IFLScience
(Photo by mikethedigiartist)
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