ウィルコムとイー・モバイル合併、具体的にどのようなメリットがあるのかを考えてみた

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ウィルコムが消滅会社となる形でイー・モバイル(イー・アクセス)との合併が発表されるいう、ウィルコムユーザーにとって切ない事態となりましたが、はたしてどのような狙いがあるのでしょうか。詳細は以下から。

◆突如発表されたウィルコムとイー・アクセスの合併
合併に関する基本合意書締結のお知らせ

本日付けで発表されたプレスリリースによると、イー・アクセスおよびウィルコムは2014年4月1日(予定)に合併することについて、基本合意書を締結しています。

合併後存続する会社は固定通信事業も展開しているイー・アクセスで、両社の契約数を合わせて1000万以上(イー・アクセスが約440万、ウィルコムは約570万)の移動通信サービスの顧客基盤を持ち、今後は特に市場拡大が見込まれるスマートフォン分野に注力するとされています。

◆実は合併せざるを得ない事情も
突然発表されたことで大きな衝撃が走った今回の合併劇ですが、落ち着いて考えてみると合併せざるを得ない事情があることが分かります。

それは主にイー・モバイルの契約者数で、2011年第4四半期(10~12月)に400万契約を突破して以来、伸びが大幅に鈍化。2012年3月に高速通信サービス「EMOBILE LTE」を展開したにもかかわらず、1年9ヶ月でわずか40万を上積みするにとどまり、まさに頭打ちの状態に陥っています。

◆合併のメリットは何なのか、具体的に考えてみた
イー・アクセスには高速モバイルインターネットおよび固定通信事業、ウィルコムには音声通話事業という強みがあることを考えると、プレスリリースの「効率的に両社の有する経営資源を活用し、事業を拡大していくため」の文言はむべなるかなと思われますが、では具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

・音声通話をウィルコム、データ通信をイー・モバイル網で分担可能に
まず一番最初に思いつくメリットがこの部分。今後「音声部分はウィルコムのPHS、データ通信はイー・モバイルの3GないしLTE」という端末を積極的にリリースするようにすることで、両社のネットワークを効率的に利用できるようになります。

今年7月に発売されたウィルコムのPHSとソフトバンクの3G、そしてワイヤレスシティプランニングのAXGP回線を組み合わせた「DIGNO DUAL 2」。「DIGNO DUAL 3」はソフトバンクの回線をイー・モバイルの回線に切り替えたモデルになるのではないでしょうか。


もちろんPHS対応の3Gルーター「PORTUS」のようなアプローチも可能です。


・悲願となる下り最大150Mbpsの「EMOBILE LTE」が実現可能に
そして上記のような形でネットワークを利用できるようにすることで得られる最も大きなメリットが、イー・モバイルが現在3G用に振り分けている帯域を、LTE用に振り分けられるようになるという部分。

LTEの最大通信速度は電波の帯域幅に左右されますが、イー・モバイルへの電波の割り当て状況はこんな感じ。2013年9月時点で利用できるのは1.7GHz帯の15MHz幅のみとなります。

700MHz帯:10MHz×2(2015年から利用可能)
1.7GHz帯:15MHz×2


15MHz幅すべてをLTEに振り分けると下り最大112.5Mbpsを実現できますが、音声通話には3Gネットワークを使う必要があるため、うち5MHz幅を3Gに振り分け、残った10MHz幅をLTEに振り分け、下り最大75Mbpsにとどまっています。

また、イー・モバイルは下り最大150Mbpsの超高速なLTE通信が可能になる規格「UE Category 4」に対応したモバイルルーター「Pocket Wi-Fi GL04P」やスマートフォン「STREAM X GL07S」などを2012年から順次投入してきたものの、帯域幅の関係で最大速度は実現できずにいました。


しかし音声通話をウィルコムのネットワークに担当させれば15MHz幅をフルに使うことができ、さらに総務省が追加割り当てを予定している5MHz幅(5MHz×2)を獲得できれば、20MHz幅を使って下り最大150MbpsのLTEを展開できるようになるわけです。

イー・モバイルが以前提示したロードマップ。3Gを廃止し、LTEに周波数を振り分けるのが既定路線でしたが、ようやく音声通話サービスの振り向け先が明らかになりました。


EMOBILE LTE対応スマートフォン「STREAM X GL07S」はソフトバンクの3Gエリアに対応。イー・モバイルの3Gが停波した場合の保険を準備済みです。


なお、以下のように同業他社との周波数の逼迫度合い(2013年9月末時点)を比較すると、イー・モバイルは帯域に余裕がありすぎると言わざるを得ず、追加割り当ての審議にあたって不利になる可能性がありますが、ウィルコムとの合併は契約者数を膨らませることで、「帯域に余裕が無い」と言い張る意味合いも含んでいるのかもしれません。

NTTドコモ:1MHzあたり約38.6万契約
KDDIグループ(UQコミュニケーションズ含む):約1MHzあたり27万契約
イー・モバイル:1MHzあたり約8.8万契約


・150MbpsのLTEネットワークはソフトバンクも利用可能に
無事追加割り当てを獲得し、150MbpsのLTEネットワークを実現できれば、来年4月にスタートする新会社は非常に強い武器を手に入れることになるわけですが、同時に微笑むことになるのが親会社のソフトバンク。

ソフトバンクモバイルはイー・モバイルのLTEネットワークを組み込んだサービスを「ダブルLTE」「トリプルLTE」として展開しているため、イー・モバイルが高速化すると、その恩恵にあずかることができるわけです。


◆1社に統合されることによるデメリットも
このようにメリットの大きいウィルコムとイー・アクセスの合併ですが、1つだけデメリットもあります。

それは「契約者のダブルカウントがしづらくなる」という部分で、仮に今後PHSとEMOBILE LTE両対応のモデルが発売された場合、今までなら「ウィルコムで1契約、イー・モバイルで1契約の計2契約純増」といったカウントができたわけですが、新会社発足後はあくまで1契約純増というカウントになります。

ウィルコムの2013年の契約者数。9月末時点でグループ内のソフトバンクから回線提供を受けた「WILLCOM CORE 3G」が34万3600回線分ダブルカウントされています。


これはグループ各社の回線を利用できる端末を提供することで、「端末を1台売るだけで複数の会社が純増する」という仕組みを導入しているソフトバンクグループにとってデメリットということに。

ただし合併後もソフトバンクはソフトバンクモバイル、新会社、ワイヤレスシティプランニングの3社展開となるため、「各社の回線を融通し合って契約者を積み増し」という構図は変わらないと思われます。

◆新社名やブランド戦略が焦点に
あくまで合併することのみが発表され、その他の経営体制や社名およびブランドなどについては、決まり次第告知されるとしていますが、やはり新体制がどのような形になるのかは気になるところ。

かつて定額データ通信や音声通話定額で争っていた2社が1つにまとまるだけに、新体制発足後のサービス内容や料金体系、端末ラインナップなど、今後の動向に注目が集まりそうです。

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