今年から始まるBUZZAP!の新企画、「ねこ探訪」は日本の有名な猫たちを不定期で訪問してレポートします。第1回は和歌山電鐵貴志川線貴志駅の駅長を務める三毛猫のたま駅長の元を訪れました。
個性あふれる近畿地方の府県の中ではちょっと地味目と見られ、関西在住でもなかなか足の伸びない和歌山県。その県庁所在地の和歌山市から和歌山電鐵貴志川線に乗り換えて30分の終点、貴志駅の駅長は全国的に、そして海外でも有名な三毛猫の「たま駅長」です。
たまは1999年生まれのメスの三毛猫。2006年に貴志川線の運営が南海電気鉄道から和歌山電鐵へと変更になる開業セレモニーの日、付近の商店で飼われていたたま達猫の暮らす小屋が公道上に置いてあったことから役所から立ち退き命令を受けました。
その時困った飼い主が当時の社長にねこ達を駅舎の中に置いてもらえるようにお願いしたところ、「ただおいてあげるわけにはいかないので社員として働いてもらおう」ということで2007年1月5日に誕生したのが「たま駅長」。
犬好きだった社長が目が合った瞬間にたまの駅長姿が目に浮かび、たまが「私駅長やります」と目で訴えて自己申告してきたということで、たまの眼力も社長の動物との対話能力も図抜けていたことが分かります。
この異例の人事(猫事)は大成功を収めました。たま駅長の就任は多くのテレビや新聞で取り上げられて話題となり、貴志駅の乗降客数は2007年の1月には17%増加。たま駅長に寄る和歌山県への観光客増加などによる経済効果が11億円に達したとの研究結果も発表されています。
そして2014年1月5日に貴志川線の全駅長を統括するウルトラ駅長に昇進したばかり。そんなたま駅長の姿を見に貴志駅まで行ってきました。
ここはJR和歌山駅構内のはずれにある和歌山電鐵貴志川線のホーム。筆者が訪れたのは平日午後の早目の時間だったため人影もまばらです。
2015年のわかやま国体のラッピング電車が入ってきました。
貴志川線の駅はこんな感じ。和歌山駅以外は全て無人駅で全列車でワンマン運転を行っています。もちろんたま駅長は猫なので貴志駅も無人駅にカウントされています。神社やお寺を感じさせる駅名が多いですね。
車窓からの風景はこんな感じ。冬だからちょっと荒涼としていますが、住宅の点在する田園風景が続き、遠くには山や丘も見えます。
和歌山から30分程度で終点の貴志駅に到着。駅構内に小さな神社があります。3つの鳥居にはそれぞれ「いちご」「ねこ」「おもちゃ」と書かれていますが、これ実は貴志川線を走るスペシャル電車を表しています。
駅の壁にはたま駅長の写真があちこちにあしらわれています。
駅構内に入ると、ガラス張りのTAMA OFFICEの中にいました!社長代理の肩書を付けたたま駅長です。丸くなって眠っているようです。
しばらく待ってみましたが、全然起きません。駅長なのに愛想ない!やる気ない!振り向きもしない!
だがそれがいい!!
猫好きは(筆者は)猫のそんなところが好きなのです。ハチ公みたいに全力で真面目に待ち構えていられたらやや面食らいます。寒い冬なのですし、猫はこたつや駅長室で丸くなっておればよいのです。異論は認めません。
実際たま駅長は今年で15歳になる、人間で言えば60~70歳代のおばあちゃん。いたわって上げるのが筋というもの。とはいえ、健康管理の問題もあって食べ物などの差し入れはできないので要注意。
そんなたま駅長ですが、Twitterアカウントを持っており、フォロアー42000人を超えるアルファツイッタラーでもあります。こんな寝姿も大勢のファンを和ませており、絶大な発信力を誇っています。
にゃんご!元旦からまったり0にゃんご! pic.twitter.com/izE7WJ9eWF
— 駅長たま (@ekichoTAMA) 2014, 1月 1
そしてこの貴志駅ですが、完全にたま駅長仕様になっています。外から見るとこのように猫の顔を模した檜皮葺の屋根を持つ作り。たま駅長関連グッズを販売するお土産店とたま駅長関連スイーツの食べられるカフェも併設されています。
こちらがカフェメニュー。和歌山県や紀の川市の名産品であるみかんや柿、いちご、黒豆などを使ったドリンクやジェラートに加え、たま駅長スイーツコンペの優勝作品も食べることができます。
今回食べたのはとびつきたまシュー黒豆有機栽培ホットコーヒーのセット(500円)。しっとりしたシュークリームにたま駅長の形のクッキーが刺さっています。こちらも柔らかい歯ざわり。コーヒーも美味でした。
カフェ内にはたま駅長のこれまでの業績を示す賞状や制服などが飾られています。
同じくカフェ内にあるこちらは駅長代行のニタマの執務室。たま駅長がお休みの時に勤務しています。
駅の中にはたま駅長関連のタイルやイス、隠しオブジェなどもあるのでじっくり探してみるのも面白そうです。
ちょっと周辺に目を向けてみます。貴志駅の表に出てみるとすぐ目につくのがこちらのたこ焼き屋さん。地元の方が利用されているようです。
近づいてみると、お分かりだろうか。なんとたこ焼き5個で100円という大阪人もびっくりの安値。
タイミング的なものもあってか、焼きたてそのままではありませんでしたが、寒空の下で食べるには濃厚で美味しかったです。
そしてすぐ近くには地域情報ステーションのたまぷらざがあり、レンタサイクルもありました。田都線たまプラーザと間違えそうなのがたまにキズです。
5分ほど歩くと鑵子塚古墳にも行くことができます。冬場には心細い気分になれること間違いなしなので、帰りの電車待ちで時間が余った時にはオススメ。寂しくなったら再びたま駅長に癒やされましょう。
そしてこちらが貴志川線のスペシャル電車の「たま電車」。
たま駅長にちなんだ車両で、三毛猫風の装飾があちこちに施されている他、猫関係の書籍や絵本、マンガや雑誌を集めた文庫もあります。
なぜかドラえもんの単行本が多数ありましたが、猫型ロボットの猫繋がりということでしょう。
もうひとつ走っていたのがこちらの「おもちゃ電車」。
和歌山県内で作られるおもちゃからフィギュア、キャラクターグッズなどが展示され、ガシャポンまで設置されています。
3つ目の「いちご電車」はこの日は運休していました。たま駅長に会いに行くついでにこんな電車に乗れてしまうのが貴志川線の楽しみ。関西地方の猫好き、鉄道旅行好きにはおすすめの猫旅になりそうです。
和歌山電鐵 貴志川線 猫のスーパー駅長「たま」とおもちゃ電車といちご電車
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