【講演編】コオロギからゴキブリまで昆虫食の未来を見通し、美味しく食べる「関西虫食いフェスティバル」を体験してきました

このエントリーをはてなブックマークに追加



日本でも徐々に知名度を増してきた昆虫食。関西で今回5回目を迎える「関西虫食いフェスティバル」をまるごと体験してきました。レポートします。

兵庫県伊丹市のスワンホールで開催された「関西虫食いフェスティバル」。昆虫食についてもっと知り、そして実際に食べて楽しんでもらおうという企画で、今年で5回目を迎えます。

食の新たな可能性を押し広げる「関西虫食いフェスティバル」が8月16日に開催、主催者に突撃インタビューしました | BUZZAP!(バザップ!)

◆講演
多目的中ホールで開催された講演では、昆虫料理研究家として日本の昆虫食をリードする内山昭一氏、和歌山県で地域活性化支援団体の「いなか伝承社」を運営する田中寛人氏、フランスの昆虫食品会社KIBOのジャンフィリップ・パイヤール社長の講演が行われた他、主催者で先日BUZZAP!でもインタビューした佐藤祐一氏とアニワギ博士、ブッチョ柏木氏らによる対談も行われました。


64人限定のイベントでしたが、実際は70人以上が参加したとのこと。参加者の層は幅広く、親子連れから大学生グループ、長年の昆虫食ファンからちょっと興味があるから来てみたというライト層まで実に多様で驚くばかりです。


◆田中寛人「ムシ×発酵=昆虫ソース」
最初に行われた講演は「いなか伝承社」の田中寛人氏による「ムシ×発酵=昆虫ソース」という、人によってはドン引きしてしまいそうなテーマのもの。


田中氏は和歌山県で地域活性化のためにいなか伝承社を立ち上げ、移住推進やいなかを知ってもらうイベント、ゲストハウスやシェアスペースなどの設置に向けて活動をしており、「野食倶楽部」として昆虫や野草、水生動物などを食べるイベントも行っています。



そうした動きの中から和歌山の伝統的な醤油の醸造技術や文化を活かし、新しい調味料を作ろうとして始まったのが「ムシ×発酵=昆虫ソース」というプロジェクト。


これは大豆の代わりにタンパク源としてイナゴを使って醤油の醸造方法で調味料を作ったらどうなるのかという壮大な実験です。イナゴを使ったのは国産原料へのこだわりと、日本でも「イナゴの佃煮」として最も食材として認知されていること、そして子供にも体験してもらうために危険のない昆虫を選んだということでした。



この発想というのは特別突飛なものではなく、アジアではナンプラーやニョクマムとして、日本でもしょっつるとして魚を使った「魚醤」が作られており、動物性タンパク質を用いるのは珍しいことではありません。


大豆の自給率が極めて低い日本において、醤油への大豆の消費を昆虫で代替できるのは大きなメリットともなりますが、いったいお味はどんなものなのか。10月下旬に発売されるということで期待が高まります。


◆内山昭一「昆虫食普及の新たな試み」
次に行われた内山昭一氏の講演は昆虫食普及の今後を見据えた取り組みについて。多くの日本人にとって昆虫食はまだ「ゲテモノ食い」であったり、多少ニュースを見る人にとっても「食糧危機への対策の一環」といったもの。昆虫食に関するテレビなどでの報道が増えてきているとはいえ、未だ多くの論調はその域を出るものではありません。


今回内山氏が題材としたのは福島県須賀川市の「ムシテックワールド」で開催された昆虫食教室です。4回の開催で小学生の親子を中心として、予定の倍となる35グループ、131人が参加しました。



アプローチとしては、これまでの身近な昆虫から一度離れ、この上なく美味しい珍味、高級食材として提案するというもの。ここで例示されているシロスジというのはシロスジカミキリの幼虫のこと。内山氏によると生木の材部のみを食べて成長するため非常に美味しいとのこと。


見せ方にもこだわり「森の幸料理店」として非常にオシャレな看板です。


メニューも「シルクボイル」に「シカダフライ」となんだか高級そう。ちなみにシルクは蚕の蛹、シカダは蝉のことです。


こちらができあがりの盛り付け。どう見てもオシャレなランチにしか見えません。


こうした「見せ方」で提供したところの参加者の感想がこちら。心理的な抵抗感を超えて見た目や味を楽しんでもらうことができたとのこと。



珍しい食材といえば水族館でオオグソクムシ料理に行列ができたことが以前ネットで話題になったこともありましたが、昆虫に関しても同じように楽しさ、オシャレさ、珍しさなどを前面に押し出していくことでまた違ったアプローチができそう。

こうした形での普及は、さらに「イナゴソース」のような新機軸でのビジネスチャンスにも繋がっていき、食の可能性を大きく広げることにも繋がりそうです。

◆対談「アジアの昆虫食事情」
本フェスの主催者であり昆虫エネルギー研究所代表の佐藤裕一氏とアニワギ博士、ブッチョ柏木氏によって行われた対談はアジアの昆虫食の現在について。東南アジアに旅行に行って、昆虫を売る屋台を初めて目にしてカルチャーショックを受けたという方は少なくないかもしれません。


筆者も15年前にバンコクのカオサンロード近くの昆虫の屋台でタマサート大学の美人女子大生たちが楽しそうにカイコの揚げ物をスナック感覚で食べていた光景に衝撃を受けたものです。そんなアジアでの昆虫食は今どうなっているのか。

佐藤氏の度重なる東南アジア歴訪から選ばれた「アジアで人気の昆虫 Best3」では、第3位がコオロギ、第2位が日本でも珍味とされるハチノコ、そして第1位は養蚕の副産物でもあるカイコのサナギでした。いずれも日本でも馴染みのある昆虫ばかりなのが面白いですね。


アジアの各国でも昆虫食事情は違います。タイでもバンコクではりんご飴やベビーカステラのような、お祭りの屋台で食べるスナック扱いだということ。一方イサーンと呼ばれる東北エリアではより日常食としての色合いが強いといいます。



ラオスではカメムシからゴキブリまで、食べる昆虫の種類が豊富だったということですが、現在は近代化に伴い、官民一体となって昆虫食から脱却の方向性であるとのこと。ここ10年ほどで昆虫を売る屋台は激減してしまいました。筆者が最後に訪れた2009年でも東北部のサムヌアの市場で若干見た程度です。


一方カンボジアでは昆虫はタイへの輸出品として採取されたり養殖されたりしています。街角でもおつまみとして食べられているなどかなりフランクなようです。中国の雲南省でも少数民族を中心に昆虫食は行われており、その種類もかなり豊富。これはさすが中国といったところでしょうか。


全体的には一般的な食材として昆虫を食べる文化は急速に縮小している模様です。西洋化=近代化という幻想が、生活スタイルを食文化も含めて西洋化に向かわせ、その結果として昆虫食を「恥ずかしい遅れた文化」として嫌う傾向が少なからずあるとのこと。

却って先進国で昆虫食が見直されていることはある意味皮肉ですが、日本にとってもいつか来た道ということになりそうです。

とはいえ新たな取組も始まっており、タイでは大学で食用コオロギの養殖が行われたり、産学協同プロジェクトとしてカイコのサナギのスナックの缶詰が作られたりしており、最近はコンビニで昆虫を使ったオシャレなスナックが販売されるなど、別の動きも出てきていて面白いことになりそうです。





◆ジャンフィリップ・パイヤール「欧州の昆虫食品会社の取り組み」
昆虫食品の開発が進むヨーロッパの状況について、フランスの昆虫食品会社、KIBOのジャンフィリップ・パイヤール社長からもスピーチがありました。


現在ヨーロッパでは昆虫食品の開発は進んでいるのですが、EU内で販売される全ての食品が記載される「Liste positive(リスト・ポジティブ)」と呼ばれる一覧に記載されていないため、正式に販売ができない状況とのこと。

EU内での販売には「Nouvel Food」と呼ばれる書類での審査が必要となっているのですが、書類の難しさ、販売する食品の詳細分析にかかる費用が莫大であることから手続きがなかなか進められていないのが現状です。


そうした中でKIBOは日本向けにコオロギとミールワームの昆虫食品を開発し、現在販売も行っています。こちらが講演会場に設けられた販売ブース。



その場で食べられるコオロギとミールワームにピーナツと塩昆布を加えたおつまみも売られていました。


先日ツイートしたのがまさにこのおつまみです。味付けはされていないため、軽い香ばしさはありつつも基本的にサクサクした食感を楽しむ感じ。変な苦味や臭さは一切ありませんでした。


昆虫食がヨーロッパで興味を引いている理由としてはやはり高タンパク、低脂質でミネラルにも富んでいる「スーパーフード」としての魅力です。粉末状にしてクッキーやパンに練り込むなど、応用の範囲も非常に広く、天然素材をそのまま食べられるというところも大きな魅力です。


現在はタンパク質補給製品としてアメリカ合衆国の大豆産業との確執すら始まりつつあるとのことで、将来的に大きな可能性を見出す人も少なくありません。フランスでは大豆を輸入に頼っている現実もあり、タンパク源を自給できるという選択肢は魅力が大きいということです。

◆講演を通して
これまで筆者も昆虫食はある種の「ゲテモノ食い」だと感じてきたところがあり、国連内食糧農業機関(FAO)が2013年に発表した食糧危機への対策として昆虫食を見直すべきであるとした提案も知ってはいましたが、実際の昆虫食という取り組みはそれよりも一歩も二歩も進んでいたということは大きな驚きでした。

昆虫を使ったプロダクトが次々と開発され、昆虫食の普及に対する試行錯誤も常にアップデートされています。気がつけば昆虫がオシャレな食材として、表参道のオシャレなカフェのランチに提供されているのかもしれません。

会場もとても活気に満ちており、鋭い質問も相次いでいました。今回は初参加の人が多めだったようで、昆虫食文化の広がりを肌で感じさせて頂きました。


こちらは出店されていた鉱物アクセサリーのhyo-tanさん。今回は昆虫のデザインのジュエリーに特化しており、昆虫好きの皆様には好評だったようです。


さて、次はお楽しみの実食編です。昆虫を使った激ウマ料理がバンバン出てきますので乞うご期待!

昆虫食入門 (平凡社新書)
内山 昭一
平凡社
売り上げランキング: 130,271

楽しい昆虫料理
楽しい昆虫料理
posted with amazlet at 15.08.18
内山 昭一
ビジネス社
売り上げランキング: 303,996
・関連記事
食の新たな可能性を押し広げる「関西虫食いフェスティバル」が8月16日に開催、主催者に突撃インタビューしました | BUZZAP!(バザップ!)

食用ウジ虫を自分のキッチンで育成できるキット「Farm 432」がスゴイ! | BUZZAP!(バザップ!)

3Dプリントで虫や藻から食料を作る技術をNASAが開発中 | BUZZAP!(バザップ!)

農林水産省「食料輸入を止められたらコメの代わりにイモを食べればいい」との試算を発表、主食はヤキイモに | BUZZAP!(バザップ!)

「少なくとも肉の味はする」世界初の試験管培養ビーフハンバーガー試食が行われる | BUZZAP!(バザップ!)

このエントリーをはてなブックマークに追加