「世界一貧しい大統領」と呼ばれたムヒカ前大統領の日本人へのメッセージが素晴らしすぎる


「世界一貧しい大統領」として知られたムヒカ前大統領への日本のテレビ局のインタビューが大きな話題となっています。

フジテレビ系列のMr.サンデーでこのウルグアイのムヒカ前大統領のロングインタビューが放映され、その後ネット上でもFacebookを中心に、動画がシェアされたり書き起こしが作られて幅広くシェアされ続けています。

◆2012年のリオ会議での伝説的なスピーチ
ムヒカ前大統領を一躍有名にしたのは大統領時代の2012年のリオ会議(国連持続可能な開発会議(リオ+20))でのスピーチ。貧富の格差が広がり貧困が大きな問題となっている現代のグローバリズム、消費主義社会に対して

「現代に至っては、人類が作ったこの大きな勢力をコントロールしきれていません。逆に、人類がこの消費社会にコントロールされているのです」「残酷な競争で成り立つ消費主義社会で『みんなの世界を良くしていこう』というような共存共栄な議論はできるのでしょうか?」

として「私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです」と訴えかけました。

リオ会議でもっとも衝撃的なスピーチ:ムヒカ大統領のスピーチ (日本語版) Hana.bi

Friendly president 心やさしい大統領 - YouTube

◆世界一貧しい大統領
自分の哲学を自らの生き様にも反映させるムヒカ前大統領は、大統領時代もずっと公邸には住まず、首都モンテビデオ郊外の質素な農場に妻と住んで菊を栽培。また運転手付きの公用車に乗る代わりに中古のフォルクスワーゲン・ゴルフを愛車とし、飛行機移動にはエコノミークラスを使っていました。さらには大統領報酬の90%程度を貧しい人々や零細企業向けのチャリティに寄付して、自身は月に1000ドル程度で生活するという徹底ぶり。

こうしたことからムヒカ前大統領は「世界一貧しい大統領」と呼ばれるようになりますが、ムヒカ前大統領に言わせると「貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」とのことなので、本人にとってそれは貧しさではないのかもしれません。

ムヒカ前大統領の言葉と、それと一致した行動や生き方はウルグアイのみならず世界中で注目を浴びました。日本でもリオ会議でのスピーチがそのまま絵本になるなど知名度は高く、フジテレビがMr.サンデーではじめて特集した際にも極めて大きな反響があったとして、第2弾となる今回の単独インタビューが企画されたとのことです。

ムヒカ大統領から日本人へのメッセージ|新井由己|note

ムヒカ大統領インタビュー - YouTube

インタビュー前の特集全体はこちらの投稿から閲覧することができます。

世界一貧しい大統領 日本人への感動の言葉

フジテレビ:Mr.サンデー (2015年10月11日放送)第2弾

■世界中で熱狂が続く世界一貧しい大統領 (ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領)
清貧カリスマの原点は日本にあった...心が震えるメッセージ。

世界一貧しい大統領とは?

大統領時代、収入のおよそ8割を寄付し、質素な農場で暮らしていたことから「世界で一番貧しい大統領」と呼ばれたウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領。

今年、5年間の任期を終え、その座を退いたニュースは南米を中心に世界各国で報じられ、その後も世界中から注目されているが、日本では、その後の活動はあまり知らされていない。

およそ2カ月間に渡る交渉の末「Mr.サンデー」はムヒカ前大統領が30年以上住み続けている自宅での単独インタビューに成功。

事前に「インタビュー時間は20分」と言われていたインタビューは1時間20分にも及んだ。

その中には、ムヒカ前大統領と日本との関わり、日本人へのメッセージも込められた。
インタビューの中で、ムヒカ元大統領は幼少期からの「日系人から受けた恩」や偶然見かけた「日本人サッカー少年」など、日本に関するエピソードを語った。世界一貧しい大統領の、清貧の原点は日本人だったというのだ

ムヒカ大統領は7歳のときに父親をな亡くしたという。母親は少ない父の年金すら15年ももらえず、苦しんでいた。そこで花を栽培して生計をたてていたという。

実は家の近所に10軒か15軒ぐらいの日本人家族がいた。
花の栽培のきっかけはその日本人家族だったのだ。幼いムヒカ大統領も育て方を教わり家計を助けた。農民の思考で狭い土地に多くのものを耕していた。

「50年前の私たちは富を平等に分配することによって世界をより良くできると考えていたんだ。でも、今になって気付いたのは、人間の文化そのものを変えないと何も変わらないということだ」

「私はみんな豊かさというものを勘違いしていると思うんだよ。大統領は“王家のような生活”“皇帝のような生活”をしなければと思い込んでいるようでね。だが、私はそうは思わないんだ。多数の人と同じ生活をしなければいけないんだ。国民の生活レベルが上がれば自分もちょっとだけ上げる。少数派じゃいけないんだ。」

大統領時代から、その生活ぶりはまさに一般庶民の生活そのものだった。

──国を治める者の生活はその国の平均でなければならない──日本の国のすべての政治化たちにも聞いてもらいたい。

「人間の幸せとは何か。」
再び国連のスピーチが紹介された。

「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、限りなく多くを必要としもっともっとと欲しがることである」「貧乏とは無限の欲がある人のこと」

「ハイパー消費社会を続けるためには、商品の寿命を縮めてできるだけ多く売らなければなりません。10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会なのです。長持ちする電球は作ってはいけないのです。もっと働くため、もっと売るためにの使い捨て社会なのです。」

「私たちは発展するために生まれてきたわけのではありません。幸せになるために地球にやってき来たのです。」

そして、3月の取材の際は、日本を絶賛したムヒカ前大統領だったが、今回は違っていて、今の日本の状況について一言、「日本人は魂を失った。」──と重い言葉で指摘した。

ムヒカ前大統領は大のネクタイ嫌いで有名だ。今年3月1日に行われたウルグアイ新大統領就任式でも、前大統領はノーネクタイで出席した。

「我々も英国紳士のような服装をしなければならない。それが世界中に強制されたものだからです。」

「日本人ですら信用を得るために着物を放棄しなければならなかった。みんなネクタイを締めて変装しなければならなくなった。欧米の価値観一色に塗りつぶされてしまった世界。」

「ペリー提督がまだ扉を閉ざしていたころの日本を訪れた時の話さ。時の日本は『西洋人は泥棒』って思っていた時代だね。あれは間違いではなかったけど、賢い政策で対応したとは思うよ。西洋にある進んだ技術に対抗できないことを認め、彼らに勝る技術をつくろうと頑張ったんだ。
そしてそれを成し遂げてしまった…。でもそのとき日本人は魂を失った。」

「人間は必要なものを得るために頑張らなきゃいけないときもある。けれど必要以上のモノはいらない。幸せな人生を送るには重荷を背負ってはならないと思うんだ。」

「長旅を始めるときと同じさ。長い旅に出るときに、50kgのリュックを背負っていたら、たとえ、いろんなモノが入っていても歩くことはできない。100年前150年前の日本人は私と同意見だったと思うよ。今の日本人は賛成じゃないかもしれないけどね。」

多くのモノを持たず、それ以上を望まなかったかつての日本人。
「足るを知る」を美徳とした文化は大きな変貌を遂げてしまった。

「今の日本についてどうお考えでしょうか?」と聞くと、次のように答えた。

「産業社会に振り回されていると思うよ。すごい進歩を遂げた国だとは思う。けど、本当に日本人が幸せなのかは疑問なんだ。西洋の悪いところをマネして、日本の性質を忘れてしまったんだと思う。日本文化の根源をね。」

耳が痛い。

「幸せとは物を買うことと勘違いしているからだよ。幸せは人間のように命あるものからしかもらえないんだ。物は幸せにしてくれない。幸せにしてくれるのは生き物なんだ。」

「私はシンプルなんだよ。無駄遣いしたりいろんな物を買い込むのが好きじゃないんだ。その方が時間が残ると思うから。もっと自由だからだよ。」

「なぜ、自由か…?あまり消費しないことで大量に購入した物の支払いに追われ必至に仕事をする必要がないからさ。根本的な問題は君が何かを買うときお金で買っているわけではないということさ。そのお金を得るために使った『時間』で買っているんだよ。請求書やクレジットカードローンなどを支払うために働く必要があるのならそれは自由ではないんだ。」

私たちは、いつの間にか、ほんとうの幸せとは何か、人間が生きる目的とは何か、を見失ってしまったようだ。

幸せに暮らすため
自由でいるため
みんなが物を欲しがらない暮らし……

「その世界は実現可能だと思いますか?」

「とても難しいね…」と言いながら、ムヒカ前大統領は、インタビュアーに向かってこう言った。

「君が日本を変えることはできない。でも自分の考え方を変えることはできるんだよ。世の中に惑わされずに自分をコントロールすることはできる。君のように若い人は。恋するための時間が必要なんだ子どもができたら、子どもと過ごす時間が必要だし、友達がいたら友達と過ごす時間が必要なんだ。」

「働いて、働いて、働いて、職場との往復を続けていたら、いつの間にか老人になって、唯一できたことは請求書を支払うこと。若さを奪われてはいけないよ。ちょっとずつ使いなさい。そうまるで素晴らしいものを味わうように…。生きることにまっしぐらに。」

慈愛に満ちた優しい眼差しでそう語った。

ムヒカ前大統領の口から溢れるのは、幼いときから生きるために必死に戦い積み重ねてきた自ららの体験で導き出した信念だ。

今は、農業学校を建て、花の栽培などを教えている。

「そこに学校をつくるのは一つの夢だったと思いますがこの先の夢・目標はありますでしょうか?」との質問に対しては次のように語った。

「私がいなくなったときに他の人の運命を変えるような若い子たちが残るように貢献したいんだ。本当のリーダーとは多くの事柄を成し遂げる人ではなく自分をはるかに越えるような人材を残す人だと思うから。」

「本当のリーダーとは自分を越える人材を残すことだ。」

最後に「日本の子どもたちへのメッセージ」を寄せた。

「日本にいる子どもたちよ。君たちは今、人生で最も幸せな時間にいる。経済的に価値のある人材となるための勉強ばかりして、早く大人になろうと急がないで。遊んで、遊んで、子どもでいる幸せを味わっておくれ。」

***

ムヒカ前大統領は、今でも世界から取材や講演などで引っぱりだこだ。ユーゴスラビア出身の巨匠映画監督エミール・クストリッツア氏が監督でムヒカ大統領の生涯に迫ったドキュメンタリー映画を作製中だという。

今年80歳になる元大統領の言葉は、現代社会のかかえる根本的な矛盾をえぐり、物質文明と大量消費社会にまみれた私たち日本人の心に突き刺さるようだ。

私たち一人ひとりが、ムヒカ前大統領の言葉に眼を覚ますべきであろう。

「私一人が日本を変える」ことはできないかもしれないが、まず「私が変わること」はできる。

──「モノを買い請求書を払うため」ではなく、「人生を味わって生きるために」世の中に惑わされずに自分をコントロールすること。

──そして、人が人として持っている、思いやりや愛、命の大切さなどを基本にして、自然と調和して生きる道にシフトしていくこと。

そんな生き方をする人が増えれば、日本もいずれ変わるかもしれない。

http://blogs.yahoo.co.jp/moritakeue/13531353.html 

***

ホセ・アルベルト・ムヒカ・コルダノ(José Alberto Mujica Cordano, 1935年5月20日 - )はウルグアイの政治家。2009年11月にウルグアイ大統領選挙に当選し、2010年3月1日より2015年2月末まで、同国の第40代大統領を務めた。

Posted by 兼井 浩 on 2015年10月14日



◆幸せと物と時間、本当のリーダー
ムヒカ前大統領が日本人について語った中で興味深いことがあります。それは幸せと物と時間についての部分。

幸せとは物を買うことと勘違いしているからだよ。幸せは人間のように命あるものからしかもらえないんだ。物は幸せにしてくれない。幸せにしてくれるのは生き物なんだ

無駄遣いしたりいろんな物を買い込むのが好きじゃないんだ。その方が時間が残ると思うから。もっと自由だからだよ。なぜ、自由か?あまり消費しないことで大量に購入した物の支払いに追われ、必死に仕事をする必要がないからさ。根本的な問題は君が何かを買うとき、お金で買っているわけではないということさ。そのお金を得るために使った『時間』で買っているんだよ。請求書やクレジットカードローンなどを支払うために働く必要があるのなら、それは自由ではないんだ

君のように若い人は。恋するための時間が必要なんだ。子どもができたら、子どもと過ごす時間が必要だし、友達がいたら友達と過ごす時間が必要なんだ。働いて、働いて、働いて、職場との往復を続けていたら、いつの間にか老人になって、唯一できたことは請求書を支払うこと。若さを奪われてはいけないよ。ちょっとずつ使いなさい。そう、まるで素晴らしいものを味わうように、生きることにまっしぐらに


ムヒカ前大統領が言う「時間」とは何でしょうか?それは他ならぬ私たち自身が生きているこの時間のこと。「人生」と呼び変えてもいいでしょう。あなたがお金を得るために働いている「時間」はまさにあなたの「人生」そのものです。

ではそんな、必要以上のものを消費するためにお金を得ようと「人生」という「時間」をすり減らしながら働くこの社会を変えることはできるのでしょうか?ムヒカ前大統領はこう答えます。

とても難しいね。君が日本を変えることはできない。でも自分の考え方を変えることはできるんだよ。世の中に惑わされずに自分をコントロールすることはできるんだ。


これは絶望ではなく、ゲリラとして長く苦しい戦いを生き抜き、自分の哲学を実践しながら5年間大統領として務め上げたムヒカ前大統領ならではの実感として受け取るべきなのでしょう。ウルグアイを変えようとしたムヒカ前大統領は、彼ひとりだけではその大きな変化を起こすことができないことを身をもって感じたのかもしれません。この言葉は次のガンディーの有名な言葉ともリンクします。

あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、 世界によって自分が変えられないようにするためである


ムヒカ前大統領は自らの敷地に農業学校を開き、若者たちに花の栽培などを教えています。そして本当のリーダーについて以下のように述べています。

私がいなくなったときに、他の人の運命を変えるような若い子たちが残るように貢献したいんだよ。本当のリーダーとは、多くの事柄を成し遂げる人ではなく、自分をはるかに越えるような人材を残す人だと思うから


ムヒカ前大統領は種を蒔き、花を育てるように次の世代への教育を行っているのかもしれません。80歳になった自分だけではできなかったことを多くの次世代の子供たちが受け継ぎ、花開かせていく可能性に全身全霊を掛けているとも言えそうです。


【2016年4月12日追記】
来日したムヒカ前大統領のスピーチや言葉をまとめた記事を掲載しました。

【まとめ】来日したムヒカ前大統領は日本人に何を語ったのか? | BUZZAP!(バザップ!)

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