Photo by Mark Fischer
悲劇の少年王、ツタンカーメンの副葬品のダガーは宇宙からやってきたものでした。詳細は以下から。
古代エジプト第18王朝のファラオ、ツタンカーメン。紀元前14世紀中頃に幼くして即位し、20歳を前に謎の死を遂げたこと、そしてほぼ盗掘の被害を受けていない墓が発掘されたことから古代エジプトの長い歴史の中でも最も有名な王として現在世界中に知られています。
そんなツタンカーメンの黄金のマスクをはじめとする数々の副葬品のひとつに鉄のダガーがあったのですが、人類最初の鉄器文化は紀元前15世紀頃に現れたヒッタイトとされています。
紀元前1190年頃にヒッタイトが滅亡した後に秘匿されていた製鉄法が周辺民族に伝わり、エジプトやメソポタミアで鉄器時代が始まることになるのですが、ツタンカーメンの治世はそれよりもはるかに昔のこと。
そのツタンカーメンの墓の、ミイラの右太股に置かれていた副葬品のダガーに使われていた鉄が隕鉄と呼ばれる鉄の隕石からできていたことがイタリアとエジプトの研究者らによる合同調査で明らかになりました。
ミラノ工科大学、ピサ大学、エジプト考古学博物館からなる研究チームは非侵襲性の蛍光X線分析装置を用いてこのダガーの起源が宇宙にあることを確認。研究主任であるミラノ工科大学のDaniela Comelli博士は「ダガーの鉄が隕石由来であることはニッケルの高い含有量から明確に指摘できる」としています。
通常の鉄鉱石では4%がせいぜいのニッケル含有量が、このダガーでは11%に及んでいました。また、隕鉄は多量のニッケルと共に微量のコバルト、リン、硫黄、炭素も含んでいます。
鉄器時代以前の墳墓などから隕石由来の鉄の副葬品が発掘された事例はもちろんこれだけではなく、以前BUZZAP!でもお伝えしたように紀元前33世紀のエジプトの墓地で発見された鉄のビーズが隕石由来だったことが明らかにされています。
宇宙からやってきた鉄を王の副葬品として用いるということは、隕石を神からのメッセージと受け取っていたのでしょうか?ピラミッドの建設などを含め、古代エジプトの宗教観や宇宙観を解き明かす上でも大きな発見となりそうです。
また、Comelli博士は高度な技術を必要とするこうしたダガーが紀元前14世紀の時点で作成されていたことから、この時代のエジプトには既に製鉄法が存在していたはずだと指摘しています。
悲劇の少年王ツタンカーメンの墓の隕石から作られた鉄のダガー、知られざる歴史を解き明かす大きなヒントとなりそうです。
King Tut's Blade Made of Meteorite
(Photo by Mark Fischer)
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