本当に中古スマホが解決策なのでしょうか。詳細は以下の通り。
◆中古スマホ普及を本格的に進める政府
NHKや産経新聞社の報道によると、政府の規制改革推進会議は安価なプランを携帯電話利用者が選択しやすくするため、端末の購入代金と通信料金の完全な分離(いわゆる「分離プラン」)などを求める答申を決定し、安倍総理に提出したそうです。
携帯各社が下取りした上で、海外に販売している中古スマホなどについても公取委のメスを入れるとしており、分離プラン導入で高騰するスマホ本体代負担を中古スマホ普及によって抑える狙いがあるとされています。
◆中古スマホの問題点は?
高い新品の代わりに安い中古を普及させたい政府。それがどれだけ無茶な話は少し考えれば分かりそうなものですが、今回あえて中古スマホの問題点を列挙してみました。
・そもそもバッテリーが劣化している
最も大きな問題がこれ。バッテリーは完全に消耗品で、中古スマホを買った時点ですでに大きく劣化している可能性があります。
しかも近年のスマホはバッテリーを自分で交換できないようになっており、メーカーなどで交換してもらった場合、高額な費用が発生します。
近年稀なバッテリー交換できるauの新型スマホ「LG it」。バッテリー問題はクリアしているものの性能は高くないため、2~3年後に中古を買って使うことは全くオススメできません。
・OSがアップデートされず、セキュリティ上の問題がある
iPhoneを除く大半のスマホは、OSアップデートを発売後1~2回しか受けることができません。
中古スマホを安く買えたとしてもOSのアップデートは受けられず、2020年に向けてサイバーセキュリティ向上が叫ばれる中、潜在的なセキュリティリスクとなる可能性があるわけです。
・サポート、保証を満足に受けられない
当たり前ですが中古スマホは紛失、落下時の保証なども十分に受けることができません。ショップでの手厚いサポートもなく、問題を自力で解決できる人向けです。
万が一の時、交換機をすぐに届けてもらうことができるauの「故障紛失サポート」。中古スマホは壊れた場合、逐一買い替える必要があります。
・有機ELは液晶よりも寿命が短い
また、iPhone Xを皮切りにスマホディスプレイの新しいトレンドとなりつつある「有機EL」は従来の液晶よりも表示性能が高い代わりに寿命が短いのが弱点。
中古スマホはバッテリーだけでなく、ディスプレイの発色や明るさが劣化している可能性もあるわけです。
たとえ外見の傷みが少なかったとしても、「どのような使われ方をしてきたか」で品質が大きく変わる中古スマホ。
どうしても普及させたいのであれば、せめてバッテリーの交換サービスやもしものための各種保証など、実際に利用するユーザー目線で考えた取り組みを提供することが必要です。
◆スマホ販売数を減らし、買い換えサイクルを長くしつつ中古普及を図る謎
MVNO普及を押し進めるため、大手3社のスマホ安売りを強固に封じて分離プラン導入を促した総務省。
その結果スマホの本体代は高騰し、2018年上期の携帯電話販売台数は過去最低だった2016年度上期(1518.8万台)に次ぐ低水準に。5Gが展開される来年以降も市場がどんどん縮小していく見通しです。
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つまり必然的に今後中古スマホの供給数は減り、本体代の高騰が買い換えサイクルのさらなる長期化を招くことも相まって、中古利用者はより年数を経たモデルを使うことになるわけです。
「携帯電話料金を抑えるために、2~3年前に発売された中古スマホを使わせる」という未来を思い描く政府。
日本は世界でも有数のモバイル先進国ですが、国民全体の高度情報化に資するかどうかという点においても、そのようなアプローチを手放しで肯定することはできません。
◆今のところ懸念は当たってきました
ちなみにBuzzap!では総務省が大手3社によるスマホ割引の規制を進めた際、2015年11月に以下のような懸念を記事化しました。
ただでさえスマホ本体が高くなる中で、MNPの割引額にまで上限を設けてしまえば、文字通りスマホは「高級品」となってしまい、本体代金が高くてもiPhoneやXperiaといったハイエンドスマホを求める層と、価格競争力の高い中国や台湾メーカー製スマホを求める層への二極化が進む可能性が考えられます。
おまけにユーザーの買い換えサイクルも今以上に伸びるとみられ、もしスマホの販売台数が落ち込んでしまえば、ただでさえ国内市場が最後の砦となりつつある富士通やシャープが生き残れるとは思えず、政府主導で国内メーカーに引導を渡す形になりかねません。
その懸念は案の定的中し、2016年上期の携帯電話出荷台数は過去最低となった上、「ソニー28.5%減、シャープ46.4%減と国内メーカーが大打撃を受ける中、iPhoneは微減」に。
その後台湾・鴻海の買収による抜本的な体質改善を経てシャープは持ち直したものの、富士通が携帯電話事業を手放すことを2018年1月に表明。2018年上期のスマホ販売シェアを見ても、「iPhoneか日本以外のメーカーか」が鮮明になってしまいました。
700以上の事業者が参入したことで過当競争が発生し、MVNO市場が一気にレッドオーシャン化するなど、目的と手段と結果が噛み合っていないことが多い政府による規制緩和。
中古スマホ推進もMVNOに無理矢理利用者を流そうとしている感が否めないわけですが、本当に必要なのはMVNOを統廃合してキャリアに対抗できる一大勢力を育てることではないでしょうか。
ちなみに2018年上期のSIMフリースマホの出荷台数は前年同期比7.1%減の134.3万台。総務省が肝いりで推進したMVNOはいきなり危機に瀕しています。
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