新型コロナウイルス流行で世界が揺らぐ中、くすぶっていた火種に燃料がどんどん投下されつつあります。詳細は以下から。
◆Huawei規制、さらに強化へ
日本経済新聞社およびロイター通信社の報道によると、アメリカ商務省はHuaweiに対する事実上の禁輸措置を強化することを発表したそうです。
新たな規制は「アメリカ以外の国で製造した半導体であっても、製造にアメリカの技術が用いられていれば、Huaweiに輸出できなくなる」というもの。
アメリカ製の製造装置を使った場合などを想定しており、そのような方法で製造された半導体をHuaweiに輸出する場合、商務省の許可を求める規則に見直すとしています。
◆中国が猛反発する可能性も
昨年12月にBuzzap!でお伝えした台湾TSMCにHuawei向けのプロセッサを作らせないようにする措置が実際に発動したことになるわけですが、問題となるのが中国の対応。
すでに中国共産党機関紙「人民日報」系の環球時報がアメリカ企業を「信頼できない実体の一覧表」に加える用意があると報じており、具体的にはAppleやCisco、Qualcommなどの規制のほか、航空機大手ボーイングからの購入停止などが挙げられています。
なお、もしこれらのアメリカ企業が規制された場合、最も大きく影響を受けるとみられるのがQualcomm。
同社にとってXiaomi、OPPO、Vivoなどの中国メーカーは最大のお得意様であり、もし規制の影響で各社がプロセッサを自前ないし共同で開発するようになれば、一気にシェアが失われてしまうわけです。
◆見えてくるアメリカの焦り、5Gでの劣勢が原因
ちなみにアメリカがここまでHuaweiを厳しく規制するのは、ひとえに5GでHuawei率いる中国勢が優勢なため。
5Gで用いられる電波には6GHz以下の周波数帯を用いる「Sub-6(中国勢が推進)」と、ミリ波と呼ばれる24GHz~100GHz帯を用いる「mmWave(アメリカが推進)」の2種類があり、既存の周波数帯と近く技術を応用しやすい前者がリードしています。
残念ながらアメリカは大部分を政府機関に割り当て済みのため、Sub-6では5Gの性能を満足に引き出すことができません。しかもmmWave基地局のカバーエリアはSub-6より狭く、ネットワーク整備に莫大なコストを要します。
さらなる詳細は以前掲載した「5G基地局からファーウェイ排除を進める理由、アメリカ国防総省のレポートから明らかに」を参照のこと。
◆アメリカのせいで世界の5G整備が遅れるかもしれません
上記のような理由から、同盟国に対して5GネットワークにHuaweiの機器を導入しないよう呼びかけてきたアメリカ。
しかし今まで以上に基地局をこまめに敷設しないといけない5Gの整備コストは重く、基地局大手のNokiaとEricssonの年間売上高の2倍を売り上げるHuaweiのスケールメリットがもたらすコスト削減効果は決して無視できないのが現状です。
そのため、イギリスやフランスなどの同盟国ですら条件付きではあるもののHuawei製5G通信設備の導入を相次いで認めることとなりました。
今回のアメリカの規制強化からは「なんとしてもHuaweiの足を止めたい」という強い意志が感じられますが、その理由が自国の技術面でのアドバンテージが脅かされたから……というのは、少し格好が付かない気がしてなりません。
ただでさえ新型コロナウイルス流行でサプライチェーンが混乱する中、さらなる混乱を招きかねないHuaweiへの規制強化。アメリカのせいで世界各国の5G整備が遅れてしまう可能性すらあるだけに、引き続き目が離せそうにありません。
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