【後編】熊野古道の入門編、熊野本宮大社までの道を発心門王子から歩いてみました


四国のお遍路と共に近年多くの人の注目を集めているのが紀伊半島南部を巡る熊野古道。その歴史は古く、平安期以降天皇から庶民まで幅広い日本人がこの地に「熊野詣(くまのもうで)」と呼ばれる参拝の旅に出ました。

そんな熊野古道の三山として知られる熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社を訪れてみました。

Buzzap!取材班は古来最も多くの参詣者が歩いたとされる中辺路の、熊野本宮大社の神域の入口ともされる「発心門王子」から本宮大社までの6.9kmを歩きます。前編では発心門王子から中間地点の伏拝王子までの模様をお伝えました。

さてここからは後半戦。この辺りからは山道が多くなります。下り坂が続くので膝には注意。

シダの生い茂る鬱蒼とした森が続きます。

20分ほどで小辺路との合流点、三軒茶屋跡に。車道には下りずに橋を渡ります。

昔のお茶屋を模したという休憩所。トイレもあります。

かつて存在していた九鬼ヶ口関所を模した門。ここで参拝者あらためがあり、通行料を取られたということです。

最後の2kmです。

石畳の道を上り下りしつつ進みます。

展望台があるというのでちょっと寄り道。

少し上ると開けた尾根に。

伏拝王子よりもかなり近くに鳥居が見えます。

この辺りからはずっと下り。石畳は決して歩きやすくないので足をひねらないよう注意が必要です。

車の音が聞こえだし、山道が終わります。

車道に出ると眼下に人家が見えてきます。

完全に住宅地。正面の森がもう本宮大社です。

本宮大社の目前にある祓殿王子。

発心門王子から休憩込みで約3時間、熊野本宮大社に到着です。裏門にも見えますが、熊野古道を(入門編とはいえ)歩いて到着したのですからこちらが堂々たる正門でしょうという気分で境内に。

八咫烏のポストがお出迎えです。八咫烏は熊野大神に仕える存在とされる導きの神で太陽の化身ともされ、神武東征の際に熊野国から大和国への道案内をしたことでも知られます。

マスクも装着するなど芸が細かいですね。ここから手紙を出すと八咫烏の記念スタンプが押されるそうです。

ご覧のようにまあまあ密です。

正面の神門から入り参拝。家都美御子大神、速玉之男神、牟須美大神らに加えて天照大神が祀られています。

ここからいわゆる正面に向けて階段を下りてゆきます。

入口の鳥居を出ると目の前は本宮大社前のバス停。これにて一巡りしたことになります。

ただし、ここで忘れずに参拝しておきたいのが大斎原(おおゆのはら)。現在の熊野本宮大社は1889年(明治22年)の十津川大水害により、上四社以外の建物がすべて流失し、高台に移転されたもの。

つまりこの大斎原は本来の熊野本宮大社のあった、神が舞い降りたとされる極めて重要で神聖な場所。熊野川・音無川・岩田川の合流点に位置し、江戸時代までは橋が掛けられていなかったため、参拝者たちは音無川を渡って最後の水垢離を行いこの神域に入りました。

京都の平安神宮の鳥居よりも大きい、高さ約33.9mの日本一の鳥居がお出迎えです。

木々に覆われた境内にはしんと張りつめたような空気が漂います。パワースポットとして人気というのも頷けます。

水害で流失した中四社と下四社をまつる石造の小祠があります。周囲は奇麗に手入れされており、離れがたい雰囲気があります。

ここまで来たら目の前の熊野川にもぜひ立ち寄ってみましょう。川原は大きな白砂利に覆われており独特な風景です。

水質のせいか、川の近くには雑草も生えておらず、ひたすらに広く白い砂利。本宮大社や大斎原にも負けない、不思議な異界感を漂わせています。このような川を渡るという体験はまさに異界たる神域へと踏み込むにふさわしい一歩ということが身に染みて感じられるはず。

ということで、ほんのさわりではありましたが、熊野古道を体験してみました。本気で歩くのであれば、京都や伊勢から半月以上掛けるか、大峯山寺や高野山金剛峰寺から険しい山道を歩くことになり、四国のお遍路さんにも負けないガチな修行となります。

京都や伊勢からも距離的には近いものの、半島という地形や深い山岳地帯によって閉ざされた熊野という異界。そしてそこに古くから根付き、鳥羽上皇、後白河法皇、後鳥羽上皇といった皇族から庶民までを千年以上に渡って引き付け、「蟻の熊野詣」と呼ばれる行列ができるほどでした。

日本の歴史から見ればアウトサイダーでありながらも、確固たる立ち位置を保ち続けた熊野古道。この場所を自分の目と足で感じてみることは、より深く日本の歴史を知ることに繋がるのではないでしょうか。

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