【Soft25周年インタビュー Vol.3】Softの見た世界と日本、現在と未来


今年結成から25周年を迎える、京都を代表するバンド「Soft」。11月3日の記念Partyを前に現メンバーへのロングインタビューが実現しました。


(インタビュー第2弾記事はこちらから)

京都在住で音遊びをしてきた人であれば、必ずどこかで出会ったであろうバンド「Soft」。1993年の結成以来、多くのメンバーが出入りしつつアンダーグラウンドシーンの音楽を呼吸するかのように進化を続けてきたSoftが今年25周年という大きな節目を迎えました。

11月3日(土)には京都の老舗クラブであるMETROにて「SOFT Presents 25th ANNIVERSARY LIVE」が決定しているSoftのSIMIZ、UCON、PON2、KNDの4人の現メンバーに結成から現代に至るまでのSoft、そして彼らが生まれ、ホームとして暴れ回った京都という街とそのシーンについて存分に語って頂きました。

インタビューはSoftのベースUCON氏の経営する京都市の繁華街、河原町から程近い御所南の「ambient cafe mole」で行われました。

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B:アメリカツアーもされてましたね。

SIMIZ:2回行ったね。

UCON:2004年と2007年やったかね。

B:どのようなきっかけだったんでしょう。

UCON:シアトルに友達がいて、その人がいろいろ動いてくれて。

SIMIZ:長いこと呼びたがってくれてたんやけど、俺ら現実味がなかったんやけど、1回目の頃はよう学祭とか呼んでもらってて、ギャラも結構もらってたから「これ行けるやん」ってなって。

UCON:京都造形芸術大学の学祭に呼んでもらったギャラが飛行機代になった、確か。それで西海岸をシアトルからロスまで、友達のバンドにでかいダッジのバンを借りて自分らで交替で運転してライヴしながらサンフランシスコ行ったりしつつロサンゼルスまで往復して。無茶苦茶でかかったですよ、アメリカは車で縦断したら。

SIMIZ:西海岸楽しかったな~。

UCON:いやぁ、珍道中だけど2回とも楽しかった。

B:日本と反応も違う感じなんですか?

SIMIZ:とりあえず向こうの人話しかけてくるもんね、ライヴ終わったら。それに俺らDJあってライヴあってみたいなところでずっとやってたから、久しぶりにライヴばっかしのところ行ったし、最初ちょっと混乱してたけど。

面白かったのがオークランドでウェアハウスパーティみたいなでかい工場でアーティストがみんなで住んでて、そこでパーティやるからライヴしいひんかって言われてやりに行った時とか。

UCON:すごい面白かったな。いろんな人種がおって。

SIMIZ:かなりクレイジーな感じで。

UCON:ヌードルファクトリーっていうオークランドのウェアハウスでしたね。

B:その中にサウンドシステムを組んでライヴをしてたんですね。

SIMIZ:広いスペースにライヴスペース2つが対角線上に組んであって、それが交替でやってく形で。そうか、そうすりゃバンドの転換とか要らんのや、すごいなこいつらって。

UCON:アメリカ合衆国はアルコール出す店は午前2時で終わらなあかんみたいでね。それまで日本でずっと朝までに慣れてたからすごい戸惑いあったけど。ヌードルファクトリーはプライベートだったから朝までやってて。

SIMIZ:銃とかあるから朝まで酒出したらいろいろ起きるんやろね。スーパーマーケットでも買えへんかったもんね。レジまで持ってっても時間で買えへんみたいな。

PON2:いつもビールで困ってたもんな。

B:先にケースで買っておかないといけないとこですね。

SIMIZ:あとビールとタバコが同時に楽しめへんというね。店の中でビール飲んでタバコ吸えへんからビール持って外出たら、ビール外で飲むのはあかんって。お前のとこは自由の国じゃないのかと。

UCON:結構シビアに注意されたね。紙袋に入れてたらええらしいんやけど、おおっぴらに飲むのはNGと。

SIMIZ:あっちはハードリカーよく飲むし、問題は多そうやったもんな。話を聞いてると。

B:ツアーで回ったシーンではそういった問題には行き当たりませんでしたか?

PON2:西海岸はそんな危ない雰囲気なかったね。

B:対バンしたようなバンドはDead系やジャムバンドが多かったりしたんでしょうか?

SIMIZ:へんなバンドが多かった。ペラペラのベース2人ですごい遅いのとか、ジャンク音楽みたいのとかちょっと聴いたことない音楽いっぱいあったね。狂っとんなこいつらみたいな。

B:プログレやジャムともまた違う感じですか?

SIMIZ:違う…もっとジャンクで壊れてる感じやったね。とりあえず面白かったで。興味持って次のライヴ遊びに来てくれたりとか、みんなフレンドリーやったね。すごい近い感じ。

B:西海岸の2000年代中頃の空気感はそんな感じだったんですね。

SIMIZ:実際に音が全然違うんよね、空気が違うし、鳴りが。やっぱジャズのトランペットとかロックのエレキギターとか、あの辺の周波数が飛ぶ空気なんかなぁって。

UCON:中域がパーンとね、ええ音してたね。

SIMIZ:乾燥してるしね。

B:物理的な意味で音が違ってきたんですね。

SIMIZ:最初は低音が全然ないように感じて不思議やったね。

PON2:日本のライヴハウスと比べて音小さかったよな。

UCON:爆音は日本の方がすごかったね。

SIMIZ:でかいフェスとかなったら違うんやろうけど。

UCON:ライヴハウスとかクラブとかの感じはね。クオリティも日本の方が高く感じたね、サウンドシステムとか。

SIMIZ:発想が違う感じやったね。大学のホールみたいなところで演奏することがあって、楽器貸してくれる会社の奴がPAシステムも持ってきてくれたんだけど、ハコ見て「ここはPA要らんからそのままやれ」って。

確かにそこは音楽堂やけど、鳴るように作られてるからここでは要らんってドラムセットとアンプだけ置いて帰りよって。何あれアメリカ人こんなんでええのって思ったけどやっぱり音はええねんね、それでも。

だから俺らが信じてるようなPAのシステムなんてのも、日本で後から考え出されたオリジナルな部分ってのもあるんやろうなって思った。

PON2:ほんまにドラムセットもキックだけマイクでちょっとだけ低音出すくらいで。あと演奏してる奴らも聴いてる奴らも結構みんな耳栓してるとかあったね。

UCON:欧米人は耳が弱いのか、Metroとかでも耳栓して踊ってる人たまにいてて。

B:海外で他のところに興味あったりされますか?

SIMIZ:ヨーロッパは行ってみたいね。まだ行ったことないからね。

B:ポルトガルのBoom FestivalをBUZZAP!で以前取材しましたが、ヨーロッパの音楽好きはSoftのようなタイプの音楽が好きな人が多いイメージですね。後はオーストラリアも。

SIMIZ:オーストラリアも何度も来い来い言われたけどね。絶対来いって毎年言われたけど。行くべきやったんやろうなって今は思うけど、その時は遠いしなぁみたいに理由を付けて行かへんかったね。

B:どちらも一過性のブームではなく根付いていて、ずっと聴き続けている印象がありますね。

UCON:今も野外で夏場はライヴするけど、コンパクトで小さくても音楽の垣根なく楽しめる人が集まってジャンルにとらわれないパーティがめっちゃ増えてるなって思って。

日本の場合は人数は少ないんやけど、俺らが90年代終わりにやってた頃にはなかったようなごちゃ混ぜですごくピースでおもしろいパーティとかが増えてきてるから未だに楽しめてますね。琵琶湖の「水と木の祭り」とか島根の「パサール満月祭」とか阿蘇の「Rainbow ASO」とか。

B:いろんな要素をうまくすくい取ってまとめたいいパーティは確かにありますね。

UCON:そういう場が今も生まれ続けているから、俺らも飽きずにやり続けていられるわけでね。

SIMIZ:遊び方のレベルがみんな上がってきたよね。

UCON:提供されたもので遊んでるだけじゃなくて自分らで勝手に遊んでるからね。

SIMIZ:あとは子供が増えたね。そういう祭だとフロアの半分くらい子供の時あるもんね。

B:昔から遊び続けてた人がずっと遊び続けてるって事ですよね。

SIMIZ:子供が遊んでると平和な感じするもんね。でも俺らはラッキーバンドやで。いろんないいとこ連れてってもらってるもん。

B:そんな中でもこれはっていうヤバいライヴやパーティなんかはありましたか?

SIMIZ:どこがあるやろねぇ。どこもやばかったからね。覚えてへんやつもあるよね、もうここまで来たら。

UCON:2000年代初めのころの地元のパーティーでOUTPUTとか長野の野外でやったFORESTED OVA、プレシャスホール主催の札幌の野外で
BIG FUNとか。もちろん まだまだあるけど。

KND:これヤバかったですよ、客時代に行きましたけど。

UCON:味園ユニバース、EYEちゃんと一緒にやったやつや。

KND:年越しでEYEさんとSoftでやってて。

B:なんばの味園の地下のキャバレーだったところですよね。朝までやってたんですか?

SIMIZ:これも朝まではやれへんで、通用門を通ってマカオに移動してやってたんや。

UCON:年越しまではユニバースでやったやんな。

SIMIZ:なんかネオン管ですごいギターにノイズ乗ってたん覚えてるわ。

PON2:後ろが全部ネオン管でジイイイイーってずっと言ってたな。

UCON:これはドリフのステージやって思ってたな。

B:2002年のことですか…。

UCON:この頃はFlowe of Lifeがかなり全国的にもむっちゃ盛り上がってた時期や。

SIMIZ:ALTZ君とか、ちょっと遅めのBPMのセクシーな四つ打ちの感じでね。ハウスとか。

B:関西は東京だったら別のパーティでやってるようなアーティストが混ざってやってるのが面白いですね。

UCON:それは自分らにもラッキーやったなって。俺らはヒップホップですとかハウスですって言ってしまうとなかなか広がらんのやけど、俺らはジャンルが特定できないからいろんなジャンルの人らと一緒にやる機会がこれまであったから。

B:少し時間が飛びますが、東日本大震災の前後で京都の音楽シーンにも変化はあったのでしょうか。

SIMIZ:ぐりっと変わったところがあるね、あれ以降。みんなの意識が変わって、日本人が急に全体的に賢くなったし、全部嘘やみたいなのも分かってきたし、それ前提でやってるから強くはなったよなって、人の繋がりとか。

B:京都に来る人も変わりましたか?

SIMIZ:レベル高い人が入ってきたね。東京で何かの仕事のプロだったっていうような人が入ってきて、こっちで遊びでやってたレベルの人が大きく刺激を受けたりとか。京都はそういう街やねん。外から入ってきたもんが常に更新していくというか。

B:それはなかなかない感覚ですね。

SIMIZ:おもしろい街やから離れられへん。左京区なんかほんまそうで。ゆるいけど刺激があるっていうのがね。食い扶持さえ確保できればこんないい場所はない。

B:とてもよく分かります。左京区的なところの中心に、Softの息吹をどこかで感じます。

SIMIZ:精華大ってのは大きいな。

UCON:そうだねぇ。

B:そこに繋がるんですね…。

SIMIZ:卒業証書ほしいねんけどな。がんばったし。

B:むしろそろそろ講師として呼ばれたりしそうな気もしますが。

SIMIZ:いろんなこと教えてあげれんのにな。

B:今の若い世代にも昔から遊んでいた人たちと同じようなものを感じたりもしますか?

UCON:先日の京大吉田寮の「村おこし」(編集部注:2018年9月に吉田寮食堂で開催された「村屋」主催の3日間に渡るイベント)とかまさにそうで、僕らより下の世代が中心になってあれをやってることに感動しましたね。

とは言ってもオーガナイザーは30代半ばなので、今の20代がどうかはちょっと分かりませんが。遊びに来てた子は20代もかなり混じってたけど。

B:最後に、11月3日の土曜日のMetroでのパーティ「SOFT Presents 25th ANNIVERSARY LIVE」について教えてください。これまでにSoftに関わった人が再集結するとお聞きしましたが…。

UCON:そうですね。僕らのライヴも過去に参加してくれてた人に声掛けて、その頃にやってた曲なんかもやりたいなと。

B:では本当にこの25年の集大成ということになりますね。

UCON:ええ、時系列はバラバラにしようと思ってるけど、いろんな人が出たり入ったりの編成でやってみたいなと。鍛え直しせんとね。

PON2:どんな曲があったか覚えてへんってこともあるしね。

SIMIZ:この曲と似てんねんけど違うって曲があったりとか。25年って産まれた子供が大人になってるもんね。

B:四半世紀もSoftを続けて来れた原動力は、さっき言ったように面白い音楽シーンがあって遊んでこれてたというのが大きいのでしょうか。

SIMIZ:止めどころが見つからへんかったっていうのもあるね。面白い人いっぱいおるし、行くとこ行くとこ面白いし。

UCON:それはみんな進化してるって証拠やと思うんよね。

SIMIZ:だからどこもライヴしてって言ってくれへんようになったらなくなるんやろね。とりあえずなんかやらへんみたいな話があるし、ほなやろかみたいになって。行くと行くでおもろいし。

UCON:自分ら企画って久しぶりやもんね。

B:そうなんですね。確かにいつもドンと出てくるイメージがありますし…。

SIMIZ:この歳になるといろんな責任がいろんなところにあるから、音楽だけやってたらええって風にもなってないし。だからほんと続けれてるだけでも偉いなって思ってるけど。子供できて止めたとか多かったからね、若い頃。なんか止めれんかったね。

B:だからこそ、ここまで。

SIMIZ:往生際が悪いというか。誰か死ぬまではやるんちゃうかな。止める理由が今のところないし。

B:そう考えると面白い人がいて面白いシーンのあった京都という場所がホームだったことは大きいということですか。

SIMIZ:だいぶでかいですね。

UCON:そうやね。

SIMIZ:そういうシーンを一緒に作ってきたっていうのもあるしね。みんなでなんか作った感じはあるね。Soft以外の友達でも、いろんな話していろんなことして遊んで、すごい数のビールを空けて、なんかとりあえず常に探してる感じはあるね、新しいヴィジョンみたいなものを。

B:そういう繋がりで今回参加する人も…。

UCON:DJだったり、アーティスト以外でもこの企画自体を進んで手伝ってくれる人がいて。

SIMIZ:「どうすんですか、ミーティングしましょうよ」とか言われたり。

UCON:ケツ叩かれるくらいのね。それが財産かなって。すごい人と知り合えて今でも繋がっていられるとか。

B:この感じだと30周年に向けての大きな区切りという形になりそうですね。

SIMIZ:あと5年はやるんちゃうかな~。10年後って言われると自信ないけど。それ相応に進化せなあかんしね。

UCON:それが止まるとおもろなくなってまうんやろね。

SIMIZ:新しい感覚は常に求めてるし。同じ曲やってて10年前のライヴでやってた演奏を聴いたらテンポがやっぱりどんどん落ちてて、おっさんになるとテンポが落ちるんやなぁって。

でもそれが気持ちええねんね。その当時はもっと速い方が気持ちよかったんやけど、今自分らが気持ちええテンポでやってると、どんどんゆっくりになってきてて。そのうち止まるんやろな、70歳くらいで。

UCON:逆に若い時は遅いテンポでようやらへんかったな。

SIMIZ:やらへんかったな、速くないとのれへんかったし。

B:年月と共に訪れる変化も楽しんで音楽に織り込まれていくとなると息が長いですよね。

SIMIZ:バンドやる前の19歳くらいからずっと一緒におるし、もうこうなったら親戚とかと変わらへんな。今さらムカつくこともないし、喧嘩もせえへんし。いっぺん全員が家族連れてきたことあって、もう親戚の集会みたいになっててすごかったな。こんなにファミリーでかくなってるって。

あとは周りに助けてくれる友達がいっぱいおるのとかもね。仕事も一緒にしたりパーティやったり。歳が離れてる友達でも同じレベルで遊んでくれるのはありがたいな。

B:ありがとうございました!

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そしてインタビュー後にSoftの8年ぶりで、25年の集大成となるニューアルバム「TOKINAMI」が11月3日に発売されることが公表されました。

京都Metroでの「SOFT Presents 25th ANNIVERSARY LIVE」で初売りになります。

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