100年前に健康飲料として大々的に売られていた「ラジウム水」の広告、もちろん体内被曝で死に至ります


福島第一原発事故を経験した私たち日本人は、放射性物質による体内被曝の恐ろしさを嫌というほど知っています。

ですが100年前、放射性物質ラジウム入りの水は健康飲料としておおっぴらに売られていました。詳細は以下から。

キュリー夫妻が19世紀末に発見した放射性物質のラジウム。かつては放射性治療に使われたこともあり、日本では今に至るまでラジウム温泉も人気です。しかしラジウムを大量に飲み続ければ、当然体内被曝を引き起こします。

ですがそうした知識の乏しかった20世紀初頭から1930年代まで、ラジウムは軟膏やクリーム、化粧品などに使われた他、健康飲料として飲用されていたのです。

「ラジウム水」は、飲めば癌やリウマチをはじめとした幅広い病気を治癒させるだけでなく、日々の生活のエナジーもガッツリ補給できてしまう奇跡の妙薬として販売されていました。

ラジウム水のメーカーは、最初はシンプルなラジウム水の瓶を売っていましたが、のちには自宅でラジウム水を作れる器具なども開発され、大々的に売り出されます。

ですがこうしたラジウム水への熱狂は、あるゴルファーの死によって終焉を迎えることになります。

アマチュアゴルファーで実業家もであったエベン・バイヤーズ氏はラジウム水の愛好家で、「ラディトール」というラジウム水ブランドのスポークスマンでもありました。

特に勃起不全に効果があると宣伝されたラディトールを約3年、1400回にわたって服用し続けたバイヤーズ氏は体重減少や頭痛に悩まされるようになり、やがて歯が抜け落ちてゆきます。

これを不審に思った連邦取引委員会は、バイヤーズ氏から証言を取るため1931年に弁護士を派遣。

その弁護士はバイヤーズ氏の「2本の前歯を除く上顎全体、そして下顎のほとんどが失われていた」とし、また「彼の身体の残る骨組織は全て崩壊しつつあり、実際に頭蓋骨には穴が開いていた」と報告しています。
(Photo by Wikipedia

翌年の1932年にバイヤーズ氏は死亡。放射線中毒とされ、鉛で包まれた棺桶で埋葬されることになりました。1965年に研究のために墓が開けられた際、バイヤーズ氏の遺体からは22万5000ベクレルという高い放射線が検出されています

その翌年の1933年にラディトールを含むラジウム水は違法となり、同様に放射性物質を用いた特許薬のほとんどが終わりを迎えることとなりました。

同時期には、ラジウムを含有する夜光塗料を塗る作業で体内被曝した女性工場労働者「ラジウム・ガールズ」が被曝後に大勢死亡する事件もあり、放射能の危険性は徐々に知られていくことになります。
(Photo by Wikipedia

もしかしたら私たちも、100年後の人類が見たら絶句するような飲食物を摂取しているのかもしれません…。

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