NTTドコモの参戦によって、ついに国内大手3社が軒並み取り扱うこととなった「iPhone 5s」「iPhone 5c」。
これから先、各社が血で血を洗うような激しいユーザー獲得合戦を繰り広げることになるのは火を見るより明らかですが、iPhone 5で劣勢だったKDDIが圧倒的優位に立つことになるのとは裏腹に、ソフトバンクが出鼻を大きく挫かれ、一人負けする可能性が浮上しました。
◆「プラチナバンドのLTE」に対応したiPhone 5s/5c
先ほどの記事でもお伝えしたように、今回の新型iPhoneで最も大きなポイントとなるのが、基地局1台あたりのカバーエリアが広く、つながりやすい「プラチナバンドのLTE」への対応。
日本で発売される「iPhone 5c(モデルA1456)」「iPhone 5s(モデルA1453)」はNTTドコモとKDDIの800MHz帯「バンド18」「バンド19」、ソフトバンクの900MHz帯「バンド8」に対応しており、大手3社のプラチナバンドすべてをサポートしたことになります。
アップル - iPhone 5s - 技術仕様
アップル - iPhone 5c - 技術仕様
前モデルの「iPhone 5」は日本国内ではプラチナバンドと比較して基地局1台あたりのカバーエリアが狭く、建物の中にも弱い2.1GHzおよび1.7GHzのLTEのみの対応であったため、どれだけ基地局を整備したとしても、本当の意味でつながりやすくなることはありませんでした。
これはソフトバンクが3G時代に2.1GHzの基地局を18万局展開してもつながりやすさを抜本的に改善できず、プラチナバンドを導入した途端、「つながりやすさ No.1」をしきりにアピールするようになったことを見れば分かることで、LTEにおいてもプラチナバンドは非常に重要なわけです。
プラチナバンド 特設サイト | ソフトバンクモバイル
◆プラチナバンドのLTEで一気に差を付けたKDDI、ソフトバンクと立場が逆転
そして気になる各社のプラチナバンドのLTE整備状況ですが、KDDIが先日行ったネットワークに関する説明会では、総務省の公式資料をベースに、2013年8月3日時点での携帯各社のLTE基地局許可数内訳が公開されました。
これがその内訳。たびたびiPhone 5に限定したLTE比較を行ってきたソフトバンクと同じやり方で、iPhone 5s/5cに限定したプラチナバンドのLTE基地局免許許可数の比較を行うと、NTTドコモは2000局、KDDIは3.1万局、ソフトバンクはなんと0局です。
まさに立場が逆転したとしか言いようがないわけですが、ソフトバンクのプラチナバンドLTEが展開されるのは2014年になる予定。つまり、どうやってもiPhone 5s/5c発売には間に合わず、出鼻を挫かれるほか、今後調査会社などが行うであろうiPhone比較においても、当分は最も大切な「LTEのエリア」「つながりやすさ」で各社の後塵を拝するほかないのが現状です。
Twitter / miyakawa11: プラチナバンド(900MHz)での4G(LTE)提供が無いの ...
◆ソフトバンクの頼みの綱「AXGP」も非対応
新型iPhoneがプラチナバンドのLTEに対応する可能性については、ソフトバンクもある程度折り込み済みであったと思われますが、大きく番狂わせとなった感があるのが、iPhone 5s/5cのTD-LTE対応状況。
実際にFDD-LTEとTD-LTEに両対応した「モデルA1529」「モデルA1530」がリリースされたものの、ソフトバンクが推進するTD-LTE互換の通信規格「AXGP」が割り当てられている周波数帯「バンド41」には非対応でした。
しかしながら今年6月にはソフトバンクモバイルの特別顧問 松本徹三氏が新型iPhoneが登場するとみられる秋にAXGPの加入者数が跳ね上がることを示唆していたほか、「トリプルLTE」の商標が出願されるなど、気になる動きが見られました。
つまりこの時点では「仮に新型iPhoneがプラチナバンドのLTEに対応しても、下り最大110MbpsのAXGPで戦える」という考えがあったのではないかと推察できるわけですが、最終的に日本で発売されるモデルはTD-LTE非対応となり、ソフトバンクは長年付き合ってきたAppleから主力商品のiPhoneでハシゴを外される形に。
その結果が今回の「新型iPhone発表会に孫正義氏が来席しない」という異例の事態なのかもしれません。
Twitter / ACCN: 孫社長はいらっしゃらないそうです。 ...
iPhone 5cおよびiPhone 5sについては、「プラチナバンドLTE対応で盛り上がるKDDIやドコモに対し、ソフトバンクだけiPhone 5とネットワーク周りが何一つ変わらない」という事態となることが確定してしまったため、iPhoneに特別注力してきた同社がどのように対応するかに注目が集まります。
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