「ソフトバンクの4G LTEがエリア、速度共に最強」というMM総研の比較調査がおかしい



NTTドコモに続いてKDDI、ソフトバンクモバイルが相次いでスタートインしたことで注目を集めている次世代高速通信サービス「LTE」。

既存の3G回線よりも高速に通信できることもあり、実効速度やエリア整備状況などに注目が集まる中、調査会社「MM総研」が行った比較調査の結果が、違和感を覚えざるを得ないものであることが明らかになりました。



◆ソフトバンクの「4G LTE」が最速な上、NTTドコモの「Xi」と並ぶエリアカバーという結果に
次世代高速通信(4G)スマートフォンの速度調査 - 株式会社 MM総研


携帯電話のメーカー別シェアを公表していることなどでも知られる調査会社「MM総研」のニュースリリースによると、同社は「次世代高速通信(4G)スマートフォンの速度調査」として、現在「4G」と呼ばれている「LTE」「AXGP(TD-LTE)」「WiMAX」の3つの通信規格に対応したスマートフォンの電波状況および通信速度の計測結果をまとめたそうです。

計測場所はスマートフォンの利用シーンとして重要と考えられる「自宅」を意識し、不動産・住宅情報サイト「HOME'S」を運営する株式会社ネクストが発表した「2012年上半期 全国人気の街ランキング」における、日本全国10エリアそれぞれの上位10拠点を採用。各拠点につき「駅前1地点」「駅周辺の居住スポット(郵便局・銀行・役所/公園/スーパー/大学/商業施設など)2地点」の3地点で1地点につき3回計測し、平均速度をその地点での通信速度としています。

まずは4Gカバー率。なんとNTTドコモの「Xi」と「Softbank 4G LTE」が共に80.7%で同率1位に。「SoftBank 4G LTE」のサービス開始は2012年9月21日であるにもかかわらず、2010年12月よりサービスを開始したNTTドコモと同じカバー率となった点も高く評価されています。


続いての「日本全国エリア別の通信速度」「日本全国エリア別の最速地点数・シェア」では「Softbank 4G LTE」および「Softbank 4G」が好成績。LTEユーザーが他社と比べて多いNTTドコモは苦戦を強いられる結果に。



「iPhone 5」でのKDDI vs ソフトバンクモバイル対決もソフトバンクが優勢という結果に。「次世代高速通信はカバーエリアも速度もソフトバンク、ソフトバンクしか選んではいけません」と言わんばかりの内容です。


◆実は大きな問題点がある今回の調査、ソフトバンクだけ優位になる前提
「日本全国10エリアそれぞれの上位10拠点周辺の3地点で、1地点につき3回計測」という調査方法を用いたことで単純計算で900回計測したことになる今回の調査ですが、実は大きな問題点があります。

以下は今回の調査に用いられた端末と対応サービス。一見公平なように見えますが、NTTドコモやKDDIがの2社が展開しており、ソフトバンクに対してのアドバンテージでもある「プラチナバンド(800MHz帯)版LTE」に対応した端末が一切採用されていないという事態に。

・NTTドコモ
Optimus G L-01E(Xi)

・KDDI
iPhone 5(au 4G LTE)
ARROWS Z ISW13F(WiMAX)

・ソフトバンク
iPhone 5(Softbank 4G LTE)
STREAM 201HW(AXGP)


調査が行われた期間が2012年11月9日~12月5日で、「現在発売されている最新のスマートフォンを利用」とされているため、NTTドコモのプラチナバンド版「Xi」に対応した「Xperia AX」の発売に間に合わなかった……というのは分かりますが、KDDIがプラチナバンド版「au 4G LTE」に対応したAndroidスマートフォンを一斉発売したのは調査開始前の11月2日のこと。

「プラチナバンドの基地局」がどれだけ大きな意味を持つのかは、2.1GHz帯で18万局を超える3G向け基地局を展開したソフトバンクモバイルが今年7月まで「つながりにくいのはプラチナバンドが割り当てられていないから」としていたことを考えれば分かりそうなもの。

かつてソフトバンクが行った2.1GHz帯とプラチナバンドの比較。障害物などに強く、今回調査が行われた「駅前1地点」や「駅周辺の居住スポット」といったピンポイントを含む広い範囲を1つの基地局でカバーできるのがプラチナバンドの強み。



iPhone 5が対応している周波数の関係で、KDDIは同じ「au 4G LTE」でもiPhone(2.1GHz帯)とAndroid(800MHz帯、1.5GHz帯)で周波数帯をすみ分けていますが、つまり「iPhone 5でLTEがつながらなくても、Androidではつながる」といった事態は十分に考えられるわけです。

なお、もし比較対象にプラチナバンド版LTE対応モデルが含まれていた場合、NTTドコモやKDDIの調査結果は以下のように上振れした可能性があり、今回の調査結果で得をしたのはソフトバンクモバイルのみということに。歴史ある調査会社にもかかわらず、どうしてこのような調査方法を採用したのでしょうか。

・NTTドコモ
混雑していない800MHz、1.5GHz帯を利用できるため通信速度が上がり、さらにカバーエリアも広がる

・KDDI
800MHz帯と1.5GHz帯のLTEを中心に整備してきた経緯があるため、カバーエリアが広がる


◆「理論上の通信速度」も間違い、ソフトバンク版のiPhone 5は上り最大42Mbps対応?
そして今回の調査結果である意味最もインパクトが強いのが、各端末の理論上の通信速度。

以下はMM総研のニュースリリースから直接引用したものですが、「Optimus G L-01EがXi利用時、上り最大14.4Mbps(正しくは25Mbps)」「iPhone 5のSoftbank 4G LTE利用時、下り最大76Mbps、上り最大42Mbps(正しくは下り最大75Mbps、上り最大25Mbps)」「201HWがSoftbank 4G利用時、上り最大42Mbps(正しくは上り最大10Mbps)」など、数字がメチャクチャに。

※各キャリア4Gサービス/調査スマートフォンの通信速度(理論値)
<docomo LTE Xi>(Optimus G L-01E)
4Gエリア  下り 75Mbps  上り 14.4Mbps
4Gエリア外 下り 14.4Mbps 上り 5.76Mbps
<au 4G LTE>(iPhone 5)
4Gエリア  下り 75Mbps  上り 25Mbps
4Gエリア外 下り 9.2Mbps  上り 5.5Mbps
<au + Wimax>(ARROWS Z ISW13F)
4Gエリア  下り 40Mbps   上り 15.4Mbps
4Gエリア外 下り 9.2Mbps  上り 5.5Mbps
<Softbank 4G LTE>(iPhone 5)
4Gエリア  下り 76Mbps  上り 42Mbps
4Gエリア外 下り 42Mbps  上り 5.76Mbps
<Softbank 4G>(STREAM 201HW)
4Gエリア  下り 76Mbps  上り 42Mbps
4Gエリア外 下り 42Mbps  上り 5.76Mbps


なお、この調査結果は「日刊工業新聞」「マイナビニュース」「朝日新聞」「RBBTODAY」などの報道各社に取り上げられ、拡散しています。

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