パソコンやスマホの貿易赤字3兆7000億円、日本の電子産業が目を覆いたくなる惨状に



かつて自動車産業と並び、日米貿易摩擦を引き起こした日本のエレクトロニクス産業。しかし気が付けば台頭する海外メーカーなどに押され、2000年代以降は巨額の赤字や大規模なリストラ、弱者連合とも取れるような事業統合に苦しめられている印象があるわけですが、その実態が明らかになりました。

生産額は10年で半減、日本の電子産業凋落の真相  :日本経済新聞

日本経済新聞社の報道によると、1990年には自動車と並んで10兆円近い貿易黒字を稼ぎ出していた日本のエレクトロニクス産業が凋落の一途をたどり、2013年には赤字に転落したそうです。

赤字の原因となったのはコンピューター関連装置と通信機器のICT(情報通信技術)産業で、2013年の赤字額は1兆6450億円と2兆870億円。合計すれば3兆7000億円を超えるとのことで、原発停止で輸入量が増えている天然ガス(2013年は約3兆6000億円と試算)を上回るとされています。

日本メーカーが海外で製造したものを輸入した場合にも貿易収支は赤字となるため、貿易赤字自体を一概に悪いとは言えないものの、スマホやタブレット端末といった市場を席巻している電子機器は海外メーカー製の比率が高いのが現状。分かりやすく言えば、ICT産業に関しては純粋に赤字です。

なお、ICT産業が3兆7000億円もの貿易赤字を出したのに対し、電子産業全体では7700億円ほどの赤字で済んでいますが、これは電子部品が2兆9000億円の黒字だからとのこと。電子産業全体に占める電子部品の比率は生産では6割、輸出では8割に達し、日本の電子産業は部品産業の性格が強まっているとされています。

確かに海外メーカー製のスマホやタブレットを分解した際、液晶ディスプレイやカメラモジュール、各種センサー、コンデンサなどの部品が日本メーカー製であることが判明するケースが多々あることを考えれば、「部品分野で日本が活躍している」というのは納得のいく話。

しかし言い換えれば現状は「日本メーカーは各種部品を組み上げたスマホやタブレットなどの最終製品で海外メーカーに太刀打ちできなくなった」ということの表れでもあります。

さらにスマホはデジカメや音楽プレーヤー、ゲーム機といった日本勢に強みがあった市場を次々と食い荒らしている上、仮に部品の供給に徹するとしても、iPhoneのディスプレイ納品をメーカー3社に競争させているAppleのように、買い叩かれてしまう可能性は十分にあるわけです。

このように目を向けたくない事実ばかりが浮かび上がってくる日本のエレクトロニクス産業。今になって考えれば、Samsungなどと誰も利益を出せない泥沼の薄型テレビ戦争に明け暮れて日本メーカーが疲弊する中、いち早くスマホ・タブレットに目を付けた海外勢に一気に差を付けられてしまった感もあるわけですが、息を吹き返すことはできるのでしょうか。

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